東電、なぜ型破りな「再生計画」が必要なのか 原発再稼働が前提、史上空前の利益シナリオ

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たとえば、最も早い2019年度に6、7号機が再稼働した場合、連結営業利益はそれまでの約2500億円から5000億円規模に倍増する。そうなれば、廃炉・賠償費用が5000億円規模に増えても吸収できるというシナリオだ。

ただ、こうした計画自体がもろい構造であることは明らかだ。

まず第一に、柏崎刈羽の再稼働自体のハードルがきわめて高い。米山隆一・新潟県知事はこれまで、再稼働の前に福島事故の検証が必要だと言い続けてきた。そのうえで「事故の検証作業には3~4年かかる」と語っている。米山氏の在任期間は2020年10月まであるだけに、原子力規制委員会の審査をパスしたとしても、再稼働へとスムーズに事が運ぶ保障はない。

円安、原油高、需要減少がリスク要因

為替が円安に転じたり、原油価格が高騰した場合のマイナス影響も大きい。新再建計画によれば、円ドルレートが10円円安方向に動くと、約1100億円のコスト増になる。原油価格が1バレル当たり10ドル上がると約1600億円も利益を圧迫する。いずれもありえないシナリオではない。

東電本社(東京千代田区)。同社にとって少子高齢化・人口減少も大きな敵になる(編集部撮影)

加えて、節電が進んで電力需要が落ち込んだり、他社への契約切り替えが進むことも、東電にとっての大きな痛手となる。今後、地盤の関東圏で少子高齢化や人口減少が進んでいくこともマイナス要因だ。

一方で、新たな利益を生み出すためのビジネスモデルの改革は緒に就いたばかり。東電は2000万世帯以上という巨大な顧客基盤を生かし、AI(人工知能)やIOT技術も活用して新たな収益源を作り出していこうとしている。しかし、現在はまだ種蒔きの段階だ。

送配電や原子力分野では、他社との共同事業体設立によるシナジー効果を追求する。これについてはパートナー探しの具体的な進め方を今年秋までに決め、交渉を本格化させる。東電では原子力分野の共同事業体のモデル事業として、青森県内で2011年1月に着工した東通原発(現在は工事中断中)を例に挙げた。

廣瀬直己社長は「国が定めた2030年度のエネルギー構成割合で原子力の割合は20~22%。この数字を達成し、原子力に必要な人材を育成していくことは電力各社共通の課題。(東通原発を)解決策のモデルにしたい」と説明している。

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