語学も資格もムダになる「長寿化+AI」時代 「いま役に立たないこと」が価値を生む

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これについては賛否両論ありますが、BIの導入で多少なりとも時間的金銭的な余裕ができれば、もう一度大学の門をたたくこともできるでしょうし、世界中を旅して視野を広げる経験もできます。AIには代替できない職業に就ける可能性も高まります。

「人生100年時代」は生き方の変革を迫る

まして『ライフ・シフト』で描かれているように、100歳まで生きる長寿社会では、新卒のときに入社した会社で、ずっと働き続けることはなかなか難しい。転職するのか、職種を変えるのか、いずれにしてもジョブチェンジが必要です。たとえば35歳くらいで会社をいったん辞めて学生になったり、学生を経て新たな職業に就いたりという、年齢にとらわれない自由な生き方が必要になってくると思います。

それには、知的好奇心を持つことが何より大切だと私は考えています。自分は何をやりたいのか。何に興味があるのか。生涯をどんなふうに生きていきたいのか。その好奇心が学びにつながり、ひいてはAIが追随できない教養レベルや能力――問題発見力やクリエーティビティになっていくのだと思います。

いきなり大学院に入学するのは難しくても、昨今では勉強会などと称してさまざまな集まりがあります。興味のあるところに顔を出してみるだけでもよいのではないでしょうか。

無駄のように思えたり、すぐに役立つ内容でなかったりしても、少なくとも視野は広がっていくはずです。その後の飲み会だって、職場関係ではない人たちの集まりは新鮮でしょう。

横のつながり、異業種の人々との交流は、『ライフ・シフト』著者、リンダ・グラットン氏の言う「無形資産」です。もしかしたら、そうした交友関係の中から転職や起業のヒントがもらえるかもしれません。

いずれにせよ、まずはジョブチェンジを見据えた「無形資産」の蓄積こそ、「長寿+AI時代」を生き抜く秘訣ではないでしょうか。

井上 智洋 駒澤大学経済学部准教授

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いのうえ ともひろ / Tomohiro Inoue

駒澤大学経済学部准教授、早稲田大学非常勤講師、慶應義塾大学SFC研究所上席研究員、総務省AIネットワーク化検討会議構成員。博士(経済学)。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2011年に早稲田大学大学院経済学研究科で博士号を取得。早稲田大学政治経済学部助教、駒澤大学経済学部講師を経て、2017年より同大学准教授。専門はマクロ経済学。最近は人工知能が経済に与える影響について論じることが多い。AI社会論研究会共同発起人。著書に『新しいJavaの教科書』『人工知能と経済の未来』『ヘリコプターマネー』などがある。

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