中国の銀行が住宅ローンに軸足、競争が激化

昨年主要銀で30%増、住宅価格の高騰に拍車

 5月10日、中国の銀行が斜陽の企業向け貸し出しから、拡大が見込める個人向け住宅ローン業務へと急速に軸足を移している。写真は住宅の模型。北京で4月撮影。提供写真(2017年 ロイター/China Stringer Network)

[上海 10日 ロイター] - 中国の銀行が斜陽の企業向け貸し出しから、拡大が見込める個人向け住宅ローン業務へと急速に軸足を移している。支店を再編し、職員の手数料体系を見直すなど前代未聞の力の入れようで、ローンの実行件数は急増した。

ただ、専門家や規制当局、中国人民銀行(中央銀行)からは、顧客獲得競争の激しさや住宅価格の高騰を警戒する声も出ている。

中国の銀行の多くでは長年、金額が大きく金利も高い企業向け貸し出しが融資の大半を占めていた。しかし、一部の主要産業で景気が減速し、企業倒産が目立つようになった今、銀行は法人貸し出しを減らして他の選択肢を探すよう迫られている。

人民銀行のデータによると、5大銀行による住宅ローンは昨年約30%増と、過去5年で最も急速な伸びを示した。中国全体で見て、今年第1・四半期の新規融資に占める不動産向け貸し出しの割合は40.4%となった。

中国において、住宅ローンは最も安全な融資の一つ。担保がある上、物件価格に対する融資の割合(LTV)が40%を下回る保守的な借り入れだからだ。

しかし最近は、銀行が職員に厳しい目標を課すなどローン獲得競争が過熱しており、金融危機前の米国と似ているとの指摘も出るようになった。

華泰証券の銀行アナリスト、チェン・シュジン氏は、昨年は住宅ローン規制を回避する動きが「かなり多かった」と指摘。「住宅ローンと銀行資産の質に影響を及ぼさずには済まないだろう」との見方を示した。

しかもアナリストによると、今年は住宅ローン件数が伸び悩む見通しだ。住宅価格が多くの市民の手の届かない水準に高騰し、多くの都市で価格抑制策が導入されたためだ。

人民銀行はコメント要請に答えなかったが、地元メディアによると、周小川総裁は住宅ローンの急増を「均衡」させる必要があると釘を刺している。

銀行員にかかるプレッシャー

心配なのは、銀行員が住宅ローン件数を急激に増やすよう、プレッシャーを掛けられていることだ。

平安銀行<000001.SZ>のある行員は「法人チーム出身者であろうが、中小企業チーム出身者であろうがお構いなく、達成目標の50%を個人向け貸し出しが占めるようになった」と明かす。

平安銀は大規模な戦略転換に伴い、第1・四半期だけでリテール事業資産を13.6%増やした。

行員2人によると、ある支店では多くの行員が、1年に個人口座を60口開設する目標を課されている。奨励制度として、個人顧客を獲得した行員にはより高い歩合を提供する。また複数の行員によると、不人気商品の販売目標を達成できなかった行員は罰則を科される。

平安銀が住宅ローン規則を回避した可能性は示されていない。同行は前述の行員の述懐について、一部は事実と異なると述べたが、詳細は明らかにしなかった。

ウェブサイトと行員2人によると、ライバルの中信銀行(CITIC)<601998.SS>は法人向けとリテール向け貸し出しの両方に携わっていた出張所を、どちらか一方に絞らせる改革を実施し、一部地域ではリテールに絞った所の方が多い。

CITICはコメント要請に答えなかった。同行の行員についても、住宅ローン規則を回避している可能性は示されていない。

こうした競争の激化は、金融危機に先立つ米国の不動産バブルとも比較される。しかしアナリストは、中国には国営銀行が多く、米国よりも当局の統制が効きやすいと指摘する。

また、米国の金融危機に拍車をかけたモーゲージ担保証券(MBS)などの金融商品は、中国ではさほど発展していない。ただ、その規模は急速に増えつつあり、中央国債登記決算有限責任公司によると、昨年は住宅ローン担保証券(RMBS)が前年の3倍に当たる1382億元(200億ドル)に達した。

(Engen Tham記者)

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