Google検索の「青色」に隠された最強の分析力 世界の勝ち組企業はビッグデータをこう使う

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24通りの組み合わせの中でどれがいちばん効果的なのか。この疑問に答えるために、選挙陣営はウェブサイトにアクセスする約31万人を無作為に24グループに分け、各グループに対して1つのデザイン案だけを表示した。そうすれば、各グループのメーリングリスト登録率を比較することで、どのデザイン案が最も効果的だったかを判定できるという仕組みだ。

陣営では画像Aと「Sign Up(登録しよう)」という組み合わせが最も効果的ではないかという予想をした。しかし、ふたを開けてみると予想とはまったく違い、画像Bと「Learn More(もっと知ってみよう)」が最も効果的であった。陣営の試算では、因果関係分析を正確に行ったうえで選ばれた案を採用したため、当初の案に比べて約6000万ドル(72億円)の追加的選挙支援金を集めることができた。

(出所:『データ分析の力』p.99)

オバマ陣営が行ったような実験はビジネス分野で多用されている。さらに、前出のグーグルやヤフー、アマゾンのようなIT企業も、日常業務の中に因果関係分析を取り入れて業績を伸ばしている。

「価格を上げたら、利用者はどれだけ減るか」を知る方法

ただ、ビジネスの現場のすべてにおいて実験が可能なわけではない。そのような場合に使えるのが「自然実験」という手法だ。たとえ人為的な実験が行えない場合でも、「あたかも実験がおこったかのような状況」を賢く利用するデータ分析手法が存在する。

ここでは数ある自然実験手法の中でも最近多用されているRDデザイン(回帰不連続デザイン)という方法を紹介しよう。たとえば、下記の例はタクシー新規参入会社のウーバーが行ったRDデザインによる因果関係分析である。ウーバーは最適なビジネス戦略を考えるうえで「価格を上げるとどれだけ利用者が減るのか」という因果関係を知る必要があると考えた。

もちろん、最良な方法はオバマ陣営が行ったような実験を実施することであるが、大規模な実験を行うには費用がかかる。そのため、シカゴ大学の研究者に「別のデータ分析手法はないか」という依頼をしたのだ。

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