日本では不可能? 英国「母の日」にSL運転体験 母親限定、蒸気機関車を本線上で運転

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しかし不運なことに、ズボロウスキーは本業であったレースで命を落とすことになる。イタリアのモンツァで開催されたレースで、事故に巻き込まれたのだ。残されたハウィーは、彼の遺志を引き継ぎ、これらの機関車を走らせる場所を探し回り、ロムニー・マーシュの地にたどり着いた。

1920年代に入ってから、本格的に建設がスタートし、1927年7月16日に開業を迎えた。当初はハイスとニューロムニー間の8マイル(12.9km)だけであったが、全線複線で開業している。ハウィーは、すぐに路線の延伸を計画し、翌1928年にはダンジネスまでの全線13.5マイル(21.7km)が一気に開業した。

しかし、この鉄道も順風満帆というわけではなかった。戦時中の運休を経て1946年に運転再開したのだが、コスト上昇により経営が圧迫され、ニューロムニー―ダンジネス間はメンテナンス費用削減のために単線化された。1963年にハウィーが老衰で死去後、新しいオーナーとなってからは、しばらく十分な投資が行われず、車両の整備不良や線路状態の悪化を招いた。

世界最小の公共鉄道だったことも

しかし、1973年にウイリアム・マカルパインが率いるコンソーシアムが経営を引き継いで以降、再び積極的な投資が行われるようになった。線路は更新され、新しい客車も導入された。1983年には、ディーゼル機関車2両も導入され、一部の列車牽引に使われた。また学期中は、朝夕の通学列車としても使用されるようになった。現在は正社員のほか、多くのボランティアによって運行が支えられている。

ニューロムニー駅で水と石炭を補給する様子を観光客が見学。人と比較すると、車両の大きさがよくわかる(筆者撮影)

なお、あまりに小さい車体のため、一見すると遊園地にある遊戯施設かと勘違いしてしまうが、同鉄道はれっきとした公共鉄道である。かつて、「世界最小の公共鉄道」のタイトルを保有しただけのことはある(現在はウェルス&ワルシンガム・ライトレイルウェイが保持)。

ところでロムニー鉄道と聞いて、どこかで耳にしたことがある、という人もいるのではないだろうか。静岡県修善寺にあるテーマパーク「虹の郷」には、園内を周回する全長約1kmの「虹の郷ロムニー鉄道」が走っている。運行に際し、本家ロムニー・ハイス&ディムチャーチ鉄道が協力している。とはいえ、虹の郷のほうは園内だけ運行する遊戯施設の一部という扱いで、正式な鉄道というわけではない。

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