トヨタ「カローラHV」、あえてガラパゴス 攻めより“守り”、固定ファンに訴求

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対するカローラの12年度実績は約8万台。ランキング8位(軽自動車除く)と立派な数字には違いないが、看板車種としてのかつての勢いはない。このタイミングで登場したカローラHVの販売目標はアクシオ(セダン)が月販1000台、フィールダー(ワゴン)が同1500台。プリウスやアクアの実績に比べると控え目だ。

ただ、トヨタの価格設定やスタンスを読み解くと、カローラHVの役目も見えてくる。トヨタのスタンスは、攻めよりもむしろ“守り”である。

価格帯は「プリウス」と「アクア」の中間

車両本体価格は、カローラアクシオHVが192万円から、カローラフィールダーHVが208.5万円から。これは同169万円からのアクア、同217万円からのプリウスの間に位置する。手頃な価格のHVを求めているユーザーに対して、選択肢が広がる。プリウスやアクアはHV専用車であるために、見方によっては独特なデザインになっている。カローラHVの場合は、オーソドックスなセダン、ワゴンのHVが欲しいというユーザーに「はまる」。

ワゴンタイプの「カローラ-フィールダーHYBRID」

ただ、これはあくまで表向きの話かもしれない。おそらくトヨタが最も意識しているのは、カローラファンに対する訴求だろう。かつてほどの勢いではないとはいえ、カローラの国内累計販売は1224万台にも上る。カローラブランドに親しんでいるユーザーは数多く、中高年層を中心にカローラをずっと乗り継いでいるという熱心な層もいる。

現行カローラは発売当初、ガソリンエンジン仕様のみの設定だったが、既存客を中心にHV仕様を望む声が多かったという。こうしたユーザーの要望に応えて、トヨタの武器とするHVを提供するという役目が大きいのだ。

そもそも、トヨタはカローラを世界展開しているが、実は日本で販売しているのは小さめの車体サイズにするなどの国内専用車で、海外仕様とは別物だ。今回のカローラHVを世界展開するワケではなく、グローバル仕様のカローラをHV化するとしても、しばらく先になりそうだ。となれば、少し乱暴な言い方をすれば、“あえてガラパゴスに徹する”ことこそが、カローラHVの本質なのかもしれない。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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