自民党の「派閥」はなぜ求心力を失ったのか 「一強」時代の今、ひもといておきたい歴史

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その中身はかつてと比べて大きく変化しています(写真:リュウタ / PIXTA)

自由民主党(自民党)は結党以来38年間にわたり政権を担い、2度「下野」(野党に転落)したが、2012年に政権復帰。現在は一強状態にある。本格的な政権交代の荒波を乗り越えた結果、その強靭さは以前より増しているようにも見える。

拙著『自民党――「一強」の実像』でも指摘しているが、私たちは新聞やテレビ、あるいはインターネットなどを通じて、自民党に関するかなりの量の情報を得ている。ところが、そのほとんどは政局にかかわるもの。どうしても断片的な性格を免れない。派閥、総裁選挙、政策決定プロセス、国政選挙、友好団体、地方組織と個人後援会など、分析する観点は多様だ。

その1つとして、自民党の現状を正確に理解するために知っておきたいテーマが、自民党における「派閥」の存在だ。

一般的にいって派閥とは、政党の内部に存在し、その主導権をめぐって競合する集団を意味する。豊富な政治的資源や影響力を持つ領袖がメンバーに対して保護と便益を与える代わりに、メンバーが領袖に対して支持や助力を提供する。重要な機能は、①総裁選挙での候補者の擁立と支援、②国政選挙の候補者擁立と支援、③政治資金の調達と提供、④政府・国会・党のポスト配分の4つである。

かつて派閥は自民党政治の代名詞だったが、現在は求心力を失ってしまっている。この10年余りで無派閥議員は増加。1980年代でも1割程度はいたが、近年は3割前後にまで達している。

減退する派閥の資金力

現在、派閥が求心力を失っている大きな理由は、資金力の減退にある。豊富な政治資金がなければ、メンバーに対して選挙の際、あるいは日常的に十分な援助をすることができないし、メンバー相互の親睦を深める機会も貧弱なものになってしまう。手狭な事務所で我慢しなければならず、職員の数も削減を余儀なくされる。それどころか、派閥の活動にあたって、メンバーに負担を強いる機会も増える。いまや派閥に加入することは、必ずしも金銭的に魅力的ではなくなった。

もっとも、派閥の全盛期である1980年代半ばでも、国会議員は所属派閥に政治資金を全面的に依存していたわけではない。大臣経験者は原則として自前の資金調達を求められたし、若手議員でも派閥からの資金援助は多くとも収入の1~2割にすぎなかった。それゆえ派閥の役割は、直接的な資金援助よりも、むしろ一種の信用供与、すなわちパーティ券の販売や企業献金の開拓などで使用できる派閥の資金ネットワークへのアクセス権の提供にあったといわれる。

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