日本人はなぜ「生活保護受給者」に厳しいのか

誤った権利意識は許されないが全てではない

記事にもあるように、このジャンパーには、「我々は正義。不正を見つけたら追及する。私たちをだまして不正によって利益を得ようとするなら、彼らはクズだ」と不正受給を批判する内容の英文が記されていた。小田原市は、いったんは、「自分たちの自尊心を高揚させ、疲労感や閉塞(へいそく)感を打破するための表現だった」と釈明したが、その後、会見で、「ご不快な思いをさせてしまって深くお詫びをさせていただきます」と謝罪し、職員に対してこのジャンバーの着用を禁止した。

当然ながら、この事件に関して、小田原市には批判が殺到した。たとえば、みわよしこ氏は次のように述べている。

「それにしても、正直なところ「また?」という印象だった。小田原市に限らず全国で、生活保護の申請に行った人々や、生活保護を受給している人々から、「生活保護ケースワーカーや相談員に困らされ、泣かされ、屈辱を味わわされている」という話を、私はあまりにも度々耳にしているからだ」(みわよしこ ダイアモンドオンライン2017.2.10)。

また、NPO法人POSSE代表の今野晴貴氏は、小田原市の事件に関連して、福祉行政によくみられる違法行為・人権侵害として、(1)水際作戦、(2)命を脅かすパワーハラスメント、(3)貧困ビジネスとの連携、の三点をあげている。水際作戦について、今野氏は、次のように述べている。(生保行政に蔓延する違法行為 小田原の事件は氷山の一角に過ぎない 今野晴貴 Yahooニュース 2017.1.19)

「水際作戦」とは、生活保護を申請しようとする生活困窮者を、行政が窓口で追い返すことである。(中略)そのやり方は、「若いから働ける」「家族に養ってもらえ」「住所がないと受けられない」などの理由をつけて「申請書を渡さない」という方法が主流だが、「申請書を受け取らない」という、より悪質な手法もある。

さらに(2)については、「生活保護受給者に対し、行政が保護の打ち切りをちらつかせて、時に死の恐怖を味わわせながら圧迫する行為」をさし、実際に受給者の細かいプライバシーにまで立ち入ることもあるという。

精神疾患による受給者への視線は、不寛容になりがち?

精神科医にとって、生活保護との縁はかなり深いものがある。というのは、精神科の主要な疾患である統合失調症は、慢性、進行性であり、病状が進むと通常の社会生活が困難になるケースが多いからである。

彼らは家族の援助で暮らしている場合もあるが、生活保護や障害年金によって生活しているケースも少なくない。統合失調症に限らず、慢性的な重い病気のために仕事をすることができない人たちが生活保護を受給することについて、異論を唱える人はあまりいないと思う。

ただ、かつての生活保護に対するまなざしは、明言されることはなかったものの、「恵まれない人」に対する国家による「施し」といった見方が大きかったのも事実である。表面的には丁寧であっても、役所のスタッフの態度は上から目線で威圧的なものであると感じた人は多いかもしれないし、一般の国民の見方もこれに沿ったものだったのではないだろうか。

生活保護の受給者を「特殊な人たち」として「区別」あるいは「差別」することで、「そうでない人たち」は、ある種の「上から目線」で彼らの存在を許容し、寛容に見てきたという一面が考えられる。けれどもそれが、“グレーゾーンの対象者”となると、とたんに見方が不寛容となる。

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