中国が往年のスマホメーカーを飲み込む理由 モトローラ・ブラックベリーも中華スマホだ

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中華系メーカーが、かつて一世を風靡した先進国の携帯電話メーカーのブランドを、買収やライセンス契約によって取得し、活用する理由はどこにあるのか。それはやはり、世界規模でスマホの販売を拡大したいということに尽きるだろう。

中華系メーカーの多くは東南アジアをはじめとしたアジア圏の新興国を中心に海外展開を進めており、そうした地域では自社ブランドをそのまま活用し、販路開拓を進めている。しかし、欧米などの先進国では、ブランド力の弱さもあって拡大が進まず、米国のように中華系メーカーが苦戦を強いられている国もある。

ZTEは2016年より、スペインのサッカーチーム「セビージャFC」のスポンサーになるなど、先進国でコストをかけてブランド価値の向上を進めている。だが、すべての中華系メーカーが同じ戦略を取ることはできない(著者撮影)

もちろん、ファーウェイやZTEのように、地元の人気スポーツチームのスポンサーを務めるなど、プロモーションコストをかけて自社ブランドの価値を高める「正攻法」を取ることもできる。だが、それには高額なコストを継続的にかける必要があり、実現は容易ではないのだ。

そこで、より確実に欧米などの市場に入り込む手段として、かつて人気のあったブランドを買収などによって取得し、販路拡大を図っているのだ。

NECは不要、中華系メーカーが欲するブランドは?

とはいいつつも、先進国のブランドのすべてが中華系メーカーにとって魅力的なわけではない。それは、レノボがNECの携帯電話事業を買収しなかったことからも見えてくる。

NECの携帯端末は世界的な知名度が低く、世界規模で販売を目指す中華メーカーにとって魅力的ではなかった。写真は同社初のワンセグ携帯「N905i」(撮影:今井康一)

NECは2013年、スマホが急速に普及する中で苦戦していたNECカシオモバイルコミュニケーションズを、レノボに売却するべく交渉を進めていた。

だが結果的にレノボは買収に応じず、NECは2013年にスマホ事業から撤退。最終的にNECは、携帯電話端末新規開発・製造から完全撤退している。

かつて、この件についてレノボの関係者が語っていたのは「NECカシオは世界的に見て、携帯電話としてのブランド力が弱い」ということだった。世界規模で販売拡大を目指すレノボにとって、NECカシオは魅力的に映らず、買収に至らなかったものと考えられよう。

最近ではスマホ販売の主戦場が新興国に移ったことで、低価格競争が一層進み、メーカーは販売台数を大幅に増やさなければ利益を出しにくくなっている。中国勢同士の競争も激しさを増す中、世界的な販売拡大につながるブランドをいかに探し出し利用するか。今後、その動きは世界規模で広がりそうだ。

佐野 正弘 モバイルジャーナリスト

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さの まさひろ / Masahiro Sano

福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける

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