アディダス、加速する驚異的快進撃の舞台裏 サッカーや男性向けだけじゃない強みとは?

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――ローステッドCEO​は、前職の日用品大手・ヘンケルでもCEOとして実績を残してきたが、デジタル化に関してアディダスではどのような戦略を考えているのか。

ローステッドより多くの商品をネットで売り、消費者とのかかわりを強化する。2020年までにネットの売り上げを2016年の4倍となる40億ユーロにしたい。直営のネットストアはもちろん、パートナーシップを組んでいる企業のネットストアやSNSも活用していく。

3Dプリンタで靴を試作。アディダスは消費者の好みや特性に合わせて素材や足型などをデザインする構想を進めている(写真:アディダス)

将来的に、商品の製造もデジタルに向かっていく。3Dスキャンで足型などを測り、3Dプリンタで、特定の消費者のためにカスタマイズされた商品を作っていく。まだ初期段階だが、今後、デジタルは業界を明らかに大きく変化させる。

また、集めた情報を消費者に意味ある形で提供することが必要だと感じている。たとえば、センサーに対する新しい試みを行っている。

サッカーを例にすると、選手の心拍数と走行距離という情報だけでは不十分だ。ボールにチップを埋め込むことで、練習や試合後に、フリーキックで蹴ったボールの軌道や回転がどうだったかを確認することができる。(市販されているセンサー内蔵ボールやスパイクを使えば)試合にまったく異なる「知能」を導入することが可能になる。すごく速く走っていたのか、ちょっとさぼっていたのか、ということまで隠すことができなくなってしまう(笑)。

より「カスタマイズ」された商品を目指す

――ドイツで稼働が始まった「スピードファクトリー」は、提携するシーメンス社の技術やロボットを活用し、短納期で靴を生産すると聞く。どんなメリットがあるのか。また、アトランタに建設されることが決まったが、日本でも展開する可能性はあるのか。

スピードファクトリーで目指すのは、よりカスタマイズされた商品を迅速に提供することだ(写真:アディダス)

ローステッド 現在アディダスは(主にアジアなどの工場で生産し)1日約100万足の靴を販売している。スピードファクトリーの生産数は年間で100万足を想定しており、導入されたばかりのまだ新しいテクノロジーだ。

私たちが提案したい価値は価格ではなく(商品の生産サイクル短縮や3Dプリンタの活用により)洗練された高度な、カスタマイズされた商品を提供できるという点だ。スピードファクトリーを日本でやるかどうかは検討中だ。

――サッカーなど従来からの強みである領域に加えて、女性向け商品の強化も掲げている。

ローステッド女性にフォーカスすることは大変重要であり、大きく伸ばせると考えている。アディダス全体では現状、女性向けカテゴリーの売上高比率は23%だが、2020年には28%まで増やすことを目標としている。チャンスは大いにあると感じている。

ポール・ハーディスティ/1967年オーストラリア生まれ。ファッション関連会社のCFOを務めた後、1999年にアディダス入社。インドネシア、コリアなどの社長を歴任、2010年3月からアディダス ジャパン社長(撮影:尾形文繁)

女性は男性と消費行動が異なる。男性は、憧れているスポーツ選手に影響されて購入する商品を決める傾向がある。女性はどちらかといえばブロガーやファッションモデルに影響されやすい。このように、女性の消費者をつかむために、アディダスも女性の管理職を増やしていく予定だ(2016年は30%)。

ハーディスティ日本独自の取り組みとしては、2月から始まった、ファッションブランド「マウジー」とのコラボレーションがある。マウジーは若い女性向けで、かなり好調に推移している。

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