マリーヌ・ルペンが支持を伸ばした真の理由 父ジャンマリーを追放した効果は大きかった

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混戦模様だった今回の大統領選で第2回目の投票まで進めたということは、国民戦線を「普通の政党にする」ためのルペン候補の運動はかなり成功したと言って良いだろう。

国民戦線の支持者はグローバル化によって不利益を被る人々、既存の支配勢力に不満を持つ人、労働者、農業従事者などだが、女性や若者層からの支持も着実に増えている。フランスの失業率は約10%だが、若者層に限ると25%と高い。調査会社Ifopによると、18歳から24歳の若者で最も人気が高い政党は国民戦線だった(39%)。同じ年齢層の対立候補であるマクロン氏への支持率は21%だ。

「極右派」とされる国民戦線だが、大統領選に向けたルペン候補の政策を見ると、従来の右あるいは左の片方だけの捉え方には入らない内容となっている。主な政策を抜粋してみると以下のようになる。

排他的な政策のオンパレード

・EUと交渉をし、その結果によっては国民投票を実施し加盟か残留かを決める
・警察の人員を1万人増加する
・新たに4万人分、刑務所のキャパシティを増やす
・週に35時間勤務体制を維持し、退職の年齢を現行の60歳から62歳に固定化する。残業代は無課税にする。
・合法に受け入れる移民の数を年に1万人に減らす(現行より80%削減)
・正当な在留書類を持っていない移民を自動的に送還させる
・低家賃の公的住宅への入居には、フランス人を優先化する

 

全体として、低所得の普通のフランス人を保護する政策を提案しているものの、「自動的に送還」「フランス人の優先化」に排他的発想がにじみ出る。

現在の国民戦線はあからさまに特定の宗教を攻撃しないにしても、EUに対する懐疑主義、外国人を雇用する企業への課税、国籍取得の厳格化など、あらゆる「フランスの外」のものに対し、アンチの姿勢をとる。

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