1分レシピ動画、全世代女子がのめり込む必然 新興勢力が続々、30億円調達ベンチャーも

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最近では販促のためにスーパーなどの店頭スクリーンで流したり、売り場拡大のための営業ツールにしたりと、メーカー側でのレシピ動画の活用幅も広がっている。

複数サービスが乱立する中、大きく勝負をかけているのが冒頭のクラシルとデリッシュキッチンだ。1日あたりの制作・投稿動画は1~10本程度という会社が多い中、クラシルは50本超、デリッシュキッチンは数十~100程度という規模で他を圧倒。主婦を中心にユーザー数を拡大している。

両社とも分散型メディアとしてSNS上でファンを増やす一方、直近では自社アプリへの誘導に力を注ぐ。「愛用してくださっているユーザーさんから、お気に入りのレシピを保存したり、簡単に検索したりできるようにしてほしいという要望をたくさんいただいてきた」(エブリーの吉田大成・代表取締役)。

アプリでは手順ごとに分けた動画も掲載するなど、見て楽しむだけでなく実際に作る際に役に立つ機能を盛り込み、差別化を図る。

クックパッドとは違う市場を作り出せるか

料理レシピではまだクックパッドが圧倒的な強みを持つ(編集部撮影)

まったく別の形でユーザーを拡大しているのはC CHANNELだ。ターゲットは主婦層ではなく、20代前半の若年女性。料理のほか、ファッションやメイクなどライフスタイル全般の動画を1つのアプリ内で展開する。

料理動画に関しても、見た目の華やかさ、かわいらしさが際立つレシピが目立つ。いわゆる「インスタ(インスタグラム)映え」する料理だ。おかずやご飯もの以上に、スイーツのレシピ動画が多いのも特徴的だ。

料理の分野には、レシピ投稿サービスのクックパッドが巨大プレーヤーとして君臨する。250万を超えるレシピ数を有し、主婦層にとってはレシピ検索の定番になっている。

ただ、「何を作りたいかが決まっている人には便利でも、そもそもレパートリーがない、新しいレシピとの出会いのきっかけがない人には、検索する以前の課題がある」(エブリーの吉田代表)。クックパッドとは別の市場を作れる可能性は十分あるだろう。

とはいえ、レシピ動画各社のほとんどが投資段階で、収益化はまだ先になりそうだ。メーカーからの広告収入には今後も期待できるが、ライバルが少なくない中、広告主側は各社の特徴や抱えるユーザー数、ユーザー層を厳しく見るようになっていく。

一方で、分散型から自社アプリへと集客が進んでいけば、機能課金やECなどで収益を得る可能性が広がるだろう。各社にとっての次の勝負どころは、そう遠くないかもしれない。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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