成功するための努力は、なぜムダなのか 古くて新しい「原因と結果の法則」

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私がコンサルティング業界で働くようになり、がむしゃらに働く時期をくぐり抜け、一息ついた頃に疑問を覚えたのは、コンサルティング会社の価格体系がなぜ成果に連動しないのかということでした。

コンサルティングの仕事の価格体系は、多くの場合、コンサルタントの稼働単価に稼働時間をかけ、それを全員分足し上げたもので求められます。要するに投入した人員と時間で価格が決まり、それはプロジェクトがうまくいこうがいくまいが基本的に関係ありません。もちろんプロジェクトがうまくいかなければリピート受注に影響はしますが、因果関係はその程度です。

思い切って言い切ると、プロジェクトの成果(アウトプット)ではなく、プロジェクトに投入した時間(インプット)で報酬が決まります。

しかし、たとえば戦略立案がテーマのコンサルティングの仕事は、厳密には立案結果がその企業のお客様に刺さりチャリンとカネを産んで初めて価値を持つわけです。ということはコンサルティングの報酬は、対象となる事業の売り上げ、もしくは利益や現金収支と本来的には連動させるべきではないか。あるいは全社戦略であれば株価と連動させるべきでないか。若かりし頃の自分はそう感じていました。先輩にそんな書生論的な議論を吹っ掛けたりもしていました。

いつの段階の業績を成果と呼ぶか?

でも今から思えば、 実態は私が想像していたよりはるかに現実的で、私の青臭い論理は理想論にすぎませんでした。なぜならコンサルティングの価格体系の本質は、業績と戦略の間の複雑な因果関係にあったからでした。

たとえば新しい商品戦略を立案してその商品がバカ売れしたとしても、それは商品戦略によるかというと必ずしもそうとは言い切れません。営業マンが不退転で頑張ったのかもしれない。CMなどとのタイアップがブームにはまったのかもしれない。競合が不祥事でこけたのかもしれない。時間的にいつの段階の業績を成果と呼べばよいのかわからない……。

要するに経営のリアルというものは、戦略(もしくはほかの個別の要素)だけで業績すべてが決まるわけではありません。業績というアウトプットに対して、戦略や環境や従業員のやる気などのさまざまなインプットは極めて複合的なものです。コンサルティングの報酬を株価に連動させるというのも同様で、株価は業績以上にその因果関係は複雑です。

したがって、このような複雑すぎる因果関係の下では成果報酬型というのは収まりが悪く、理屈でないリアルな商取引の観点では、消去法的かつ消極的な選択肢として、投入時間をベースにした価格体系を取っている(取らざるをえない)というのが現実だったように思います。

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