高級総菜店「RF1」がイモ不足に陥らないワケ 「雪解け」を利用した独自の保管方法とは?

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岩田会長と端野町の農家との出会いは今から27年前にさかのぼる。1989年に神戸コロッケを立ち上げたばかりの岩田会長は当時、コロッケに適している男爵イモを全国各地に探し求めていた。端野町の男爵イモを口に含むと、おいしさの決め手であるでんぷん質をたっぷり含み、ほくほくしている。「これだ」――。

そこから、相互に理解を深めていった。

RF1や神戸コロッケの店舗スタッフは今でも定期的にジャガイモの収穫を体験している。また、生産・出荷した野菜がどのように商品化されるのかを契約農家に認識してもらうために、現地で物産フェアを毎年実施し、コロッケなどの商品を振る舞う。

品質改善のための意見交換も行ってきた。男爵イモは通常、薬剤を使用して茎や葉を枯らしてから収穫する。だが、できるかぎり農薬を使わずに収穫したいと、茎や葉を機械で粉砕して収穫が可能な茎葉処理機を契約農家に寄贈している。

多様な商品開発で業績も絶好調

店頭のPOPには、「どんな時も強い絆で。」のコピーとともに、ジャガイモ農家の写真も掲示(記者撮影)

「強い絆で結ばれている産地から、安定してジャガイモを供給していただけている」と、ロック・フィールドの購買担当者。この言葉はほぼそのまま、今回の販促キャンペーンのコピーと重なる。

ロック・フィールドは目下、業績絶好調。2016年4月期に続いて、2017年4月期も過去最高純利益を更新する見通しだ。

従来の量り売りからパック化商品に軸を移した店舗改装を順次実施、朝食用や高齢者向けなど多様な用途に合わせた商品開発にも力を注ぐ。このような柔軟な戦略遂行もさることながら、生産者との関係構築といった“根を張った”活動こそが、強さの源泉なのだろう。

今回のジャガイモ不足で弱点が明らかになった供給構造において、独自の保管方法などのロック・フィールドの取り組みは総菜や外食分野の同業社だけでなく、菓子メーカーなどより多くの分野の企業から注目されるかもしれない。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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