横浜・中村紀、40歳でもフルスイングの理由 ポジティブを貫く「勝者のメンタリティー」

✎ 1〜 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 19 ✎ 最新
拡大
縮小

2011年2月、独立リーグの徳島インディゴソックスの合同自主トレに参加した中村は、当時の監督で近鉄時代の同僚でもある森山一人に「もっと野球を楽しもうと思う」と話した。その裏にあるのは、こんな思いだった。

「気持ちだけでも楽しくやることで、何か吸収することがあるかな、と。歳も歳だけど、野球をもっと追求したい一心だった」

シーズンがすでに開幕していた11年5月、中村はDeNAと契約を結んだ。新天地でも、できるだけ野球を楽しもうと考えている。

「野球選手は前向きじゃないと、5年くらいで潰れてしまう。一つひとつを細かく考えなきゃいけないスポーツだけど、基本的にはネガティブになった時点で出世しない世界。何があってもポジティブにいく。打てなくても、切り替える。野球って、メンタルかなと思います」

「成功できればいいな」という感覚

よく言われる話だが、打者は10打数で3本のヒットを打てば一流と評価される。それぞれの考え方が色濃く表れるのは、打率3割をどうとらえるかだ。

「どの仕事もそうだけど、『成功する』と思っても、失敗するときもあるでしょ? 『野球は7回失敗するスポーツ』だと割り切ってやれるか、どうか。僕は『7回も失敗するんだ』と思って、『3回打てたらいい』という感覚。『成功しなくちゃいけない』ではなく、『成功できればいいな』という感覚でできれば、楽しめるんじゃないかな。3回を楽しむか、7回の失敗に尾を引くか。そこで人間の価値は変わってくると思う」

毎年70人から80人近く球界に入ってくるすべての選手が、プロで活躍できる素質を備えている。しかし、夢を実現できるのはほんの一握りだ。成功と失敗の境目はどこにあるのだろうか。

「運もあるんですよ。すごくレベルが高くても、プロの世界に行けない人を何人も見ました。何か理由があるのでしょうね」

運は自分でつかむもの、と言われる。中村が自身について「運が強い」と感じるのは、チャンスの打席だ。

「『ここだ』というところで、『打てる』と思いますから。でも、打てないヤツはいろんなことを考えていますよね」

次ページ忘れられない打席
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT