小池都知事「満員電車ゼロ」戦略に足りない点 消えた「2階建て車両」、結局は時差通勤頼み?

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協議会にはJR東日本(東日本旅客鉄道)に加え、都内を走る大手私鉄がずらりと顔をそろえた。各社共同による技術面での取り組みを発表するのかと思ったが、そうではなかった。

当日の発表文に記載された鉄道各社の取り組みを見ても、JR東日本と小田急電鉄が混雑時の列車増発という供給サイドからの混雑解消を打ち出していたものの、ほかの鉄道会社の多くは現在実施中の通勤ライナー利用やオフピーク通勤の促進など需要面からの取り組みの説明にとどまっていた。

JR東日本の冨田哲郎社長は以前、混雑緩和対策に関する記者の取材に対して、「閉塞信号機の間隔を短くして列車本数を増やすといったこれまでの対策を深耕することが現実的な対策」と回答している。技術改良といった積極投資まではなかなか踏み切れないようだ。

満員電車ゼロはビジネスチャンス

通勤時の満員電車の解消は喫緊の課題だ(写真:ひでと / PIXTA)

ただ、ライトレールの阿部氏は、「満員電車=消費者の不満は鉄道会社にとってビジネスチャンス。鉄道会社が輸送力増強と適正なプライシングによりそれを刈り取ることで満員電車ゼロに近づける。研究開発と設備投資にはコストがかかるので、混雑緩和や着席サービスに応じたプライシングを社会が受け入れれば実行できる」と言う。

今回の時差通勤による快適通勤への取り組みは、2020年の東京オリンピックに向けて継続的に行うとされている。今年の効果を見極めたうえで、来年以降の改善につなげていくのだろう。

はたしてクールビズのように時差通勤が都内で普及するか。思うように効果が上がらないときには、運行本数の拡大に向けた技術面からのアプローチが必要になってくるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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