日系EVベンチャー、1台4000万円で売るワケ 京大発は「和製テスラ」を狙わず、高級化路線

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だが、両社の目指すものはまったく異なる。

テスラが徐々に客層の裾野を広げるのとは対照的に、GLMは2車種目に販売するG4を想定価格4000万円と超高額に設定した。これは、1車種目に投入した「トミーカイラZZ」の約5倍の価格であり、テスラ「モデル3」の10倍に値する価格だ。

安く車を造ることを目的とするのであれば、大手の自動車メーカーのように巨大な設備投資を行い、車を大量生産することでコストを下げるという戦略をとる。だが、ベンチャー企業が大手の自動車メーカーと同じ戦略をとっても、かなうはずがない。

GLMは、大手メーカーの造る車のような誰もが安心して乗れる車ではなく、車好きの人が運転を楽しむための、どこかが尖った車を造ることを使命とする。

「テスラは大手と変わらない車造りへ近づきつつある。僕たちはそこを目指していない」(藤墳技術本部長)。

GLMの車は万人受けする車ではないため、生産規模は少量にとどまる。少量生産で事業を回していくには、車の価格はプレミアムに設定せざるを得ない。

2019年の量産化に向けて開発が進められているG4は、1000台の販売を目標とする。目標通りに販売できれば、同車だけで400億円程度を売り上げることとなり、これをもって2020年度の単年度での黒字化を達成できると見込んでいる。

EVの開発請負は、もう1つの事業柱となるか

「GLM G4」にはコストダウンが進んでいない新開発の部品を多く採用する(記者撮影)

とはいえ、テスラのように量産規模の拡大を目指していないだけに、EVの販売だけで事業拡大は見込みづらい。

そこでEV販売と並ぶ事業柱への成長を期待しているのが、EVの基幹部品をパッケージ化して他社に販売し、EV開発を請け負う「プラットホーム事業」だ。

今、自動車業界では世界中でEV化の波が押し寄せている。そうした中で、「新たに自動車産業に参入しようとする中国やアジアの電気メーカーやIT企業から、毎週のようにEVを開発したいという問い合わせを受けている」(藤墳技術本部長)。

GLMはすでに安川電機やオムロン、GSユアサや三菱商事などが出資するリチウムエナジージャパンなどと部品調達の面で協力関係を築いている。EVに新規参入する企業にとっては、GLMの持つ部品メーカーとのネットワークを活用できるといううまみがある。

国内外で数多くのEVベンチャーが生まれては消えていった。GLMは稼げるEVビジネスを構築できるか。今後の飛躍は同社自らがEV開発のプラットフォームになれるかにかかっている。

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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