海外オンラインカジノ、日本から利用は違法? 「賭博罪」に該当する可能性はあるのか

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また、最高裁判所は、賭博罪の保護法益を「勤労の美風」としています。その観点からは、無店舗型オンラインカジノであっても、日本国内で現金の勝ち負けが起きる以上は、「勤労の美風」を害しうるといえます。

以上のとおり、店舗型オンラインカジノについて賭博罪が成立することは明らかであり、無店舗型オンラインカジノについても、賭博罪が成立する可能性が高いといえます。

海外オンラインカジノのゲームは「公正」なのか

なお、ここまで述べたことは、あくまでも賭博罪の成否についてにすぎません。海外のオンラインカジノは、そもそも公正なゲームが提供されているか自体が疑わしく、その点からも、利用することは賢明ではないでしょう。

ちなみに、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(IR推進法)によって解禁が目指されているのは、ランドカジノ(店舗型カジノ)であり、海外にサーバがあるオンラインカジノは、基本的に想定されていません。

オンラインカジノは、規制の実効性などの点で特殊性があり、ランドカジノと同一に捉えられません。したがって、オンラインカジノの解禁の是非は、IR実施法によってランドカジノが合法化され、大きな社会的問題が発生しないことが確認された場合の、将来的な検討課題です。

その際は、オンラインカジノだけに限定した検討ではなく、ソーシャルゲーム、オンラインゲームおよび賞金付きゲーム大会なども含めた、広く統一的なゲーミング法制の構築の検討が望まれます。

山脇 康嗣(やまわき・こうじ)弁護士
慶應義塾大学大学院法務研究科修了。慶應義塾大学大学院法務研究科専門法曹養成プログラム(租税法専修)修了。入管法・外国人技能実習法・国籍法・関税法・検疫法などの出入国関連法制のほか、カジノを含む賭博法制(ゲーミング法制・統合型リゾート法制)や風営法に詳しい。第二東京弁護士会国際委員会副委員長、日本弁護士連合会人権擁護委員会特別委嘱委員(法務省入国管理局との定期協議担当)。主著として『詳説 入管法の実務』(新日本法規)、『入管法判例分析』(日本加除出版)、『Q&A外国人をめぐる法律相談』(新日本法規)、『外国人及び外国企業の税務の基礎』(日本加除出版)がある。「闇金ウシジマくん」「新ナニワ金融道」「極悪がんぼ」「鉄道捜査官シリーズ」「びったれ!!!」「SAKURA~事件を聞く女~」「ゆとりですがなにか」など、映画やドラマの法律監修も多く手掛ける。
事務所名:さくら共同法律事務所

 

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