「短い編成の電車」が走る路線は都内の穴場だ 池上線や方南町支線…一見地味でも便利

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路面電車スタイルの東急世田谷線も日中6分おきの運転だ(撮影:小佐野景寿)

一方、3両編成以下の電車が走る各線はどうだろうか。東武大師線・亀戸線・東京メトロ千代田線北綾瀬支線が6本、丸ノ内線方南町支線が7〜8本、都電荒川線が約9本、東急多摩川線・池上線・世田谷線が10本。都内東部の3路線は1時間あたり6本とあまり多くはないが、そのほかは前記の主要各線と比べて遜色ないどころか、東急の3路線は田園都市線や東横線と同じ頻度で、6分おきの運転だ。ちなみに、5両編成で上記の路線より電車の編成は長いものの、路線延長が12.7キロメートルと短い井の頭線も7〜8本運転されている。

遠く郊外から多くの利用者を都心に運ばなければならない路線は、速達性を高めるために多数の急行などを運転している。このため、都心に近いエリアの各駅停車しか止まらない駅の本数は、全体の運行本数に比べてそれほど多くないことが一般的だ。

いっぽう、短距離の路線は「遠くから速く」輸送する必要性が薄いため、すべて各駅停車でも事足りる。さらに、電車の編成が短いと1本あたりの輸送量が少ないため、利用者の多い路線であれば必然的に本数は増えるのだ。利用者から見れば、使える電車の本数が多いことは大きなメリットだ。

一見地味でも便利な路線を探そう

「都区内に住む」ことを考えた場合、短距離で短い編成の電車が行き来する路線は往々にして路線のブランドイメージはそれほど高くなく、「住みたい路線ランキング」などの上位にこれらの路線が入ってくることはなかなかない。だが、例に挙げた池上線戸越銀座をはじめ、こういった路線の小さな駅周辺には、地域に密着した魅力のある街が多数存在している。

春から東京で暮らし始めた人も多いだろう。首都圏の地理や街の特徴に慣れていない場合、住みたい場所はイメージが先行しがちかもしれないが、一見地味でも交通・生活の利便性が高い街や駅、路線は多い。鉄道が主要な交通手段の東京近郊で暮らす場所を選ぶにあたって、各路線の特徴をとらえることは重要だ。短距離で短い編成の電車が行き来する路線は、ちょっとした散策にも向いている。休日などに出かけてみると、意外に便利な街にめぐり会えるかもしれない。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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