ルポ・エジプト、自由とパンと治安のゆくえ

"春"から遠く離れて

政府は主食アエーシの価格を維持することで、市民の不満を抑えてきた
ドナルド・トランプ米大統領は4月、強権的な政治手法で知られるアブドルファッターフ・アッ=シシ・エジプト大統領をホワイトハウスに招き、その国家運営に賛辞を贈った。「独裁者」とバラク・オバマに嫌われたシシ大統領にとって、これが初めての訪米だった。
治安回復を最優先に掲げ、国内で高い支持を得るシシ現政権。しかし、テロとみられる航空機墜落やコプト教会爆発が連続するなど、なかなか治安への懸念が払拭されない。昨年後半からの物価上昇で少しずつ市民の不満も高まる。次期大統領選を来年に控え政治の混乱も心配される中、どこまで治安は回復されるのか、そして、エジプトは再び外国人観光客を取り戻せるのか。

前編記事:観光客激減、エジプトに日本人客は戻るのか

変動相場制導入で通貨ポンドが暴落

エジプトに進出して6年になる、ある日系企業では、昨年末から給料の前借りをするエジプト人社員が目立って増えた。過去、革命やクーデター時にもなかった経験だそうだ。

「いまの給料ではまともな生活ができない」

現地社員がそう訴え、前借りで急場をしのごうとする理由は、一気に加速した物価の上昇にある。牛肉やコメの値段は2倍、ガソリンは3割増、砂糖などもかなり高騰している。限度額の前借りを数日おきに繰り返し、「ほとんどその日暮らし」という社員もいるという。

エジプトの通貨「エジプトポンド」は、昨年から今年にかけて大幅安で推移している。

きっかけは2016年11月に、エジプト中央銀行が変動相場制への移行を発表したことだ。中銀の発表後、切り下げられたポンドは対ドルレートで50%超の下落。食品の多くを輸入に依存するエジプトでは、ポンド安は生活必需品の値上がりに直結する。昨年12月の物価上昇率は前年比25%を超えた。

アラブの春以降、エジプトは政情不安から外国からの観光客や投資の減少に歯止めがかからない。財政赤字は膨らみ、深刻な外貨不足にも陥っている。

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