ヤマト「採算悪い1000社と強気交渉」の中身 引き受ける荷物の総量を減らす交渉も実施

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大口先への値上げ交渉は毎年行われてきた。ただ今回のように引き受ける荷物の総量もセットで交渉することはなかった。場合によっては荷物を「請け負わない」という選択肢もあるため、従来よりも強行に交渉に臨めるものとみられる。値上げ交渉は9月をメドに終える考えだ。

2018年3月期は、交渉段階の上期(4~9月)こそ、前期同様に厳しい状況が続く見込みだ。2000年以降では初めて、上期で営業損失30億円と赤字に転落する見通しだ。

値上げを労働環境整備の原資に

一方、値上げ交渉が決着する9月以降は回復基調に転換できそうだ。今2018年3月期の宅配便単価は通期で559円前後と、前年度比6%強の上昇を見込んでいる。同時に宅配便の総量も減らし、外部委託費用を抑えるため、大幅な改善が期待できる。

ヤマトホールディングスの山内雅喜社長と、ヤマト運輸の長尾裕社長がそろって会見した(撮影:今井康一)

ただ会社が想定する2018年3月期の下期(2017年10~2018年3月)の営業利益は330億円。これはこの10年でも昨年度に次いで2番目に低い水準で急回復を見込んでいない。値上げ分を「労働環境の整備に当てる」(山内社長)ためだ。労務管理の徹底などで社員の給与が3%強増大するとみているほか、「基盤となる労働時間管理の徹底のため、90億円の費用を見込んでいる」(山内社長)。

労働管理を徹底することで人件費がどれだけ増えるか、そして外部委託にどれだけ頼らざるを得ないのか、まだ不透明な面が多いため、慎重な業績予想を組まざるを得ないようだ。

鈴木 良英 東洋経済 記者

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すずき よしひで / Yoshihide Suzuki

『週刊東洋経済』編集部記者

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