大手生保の運用担当は市場をどう見ているか 超低金利と為替のボラティリティに悩む

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一方、運用の前提となるマーケットの見通しは各社とも似通っている。

表のように、国内10年金利はマイナス0.2%からプラス0.2%の幅にほぼ収斂している。第一生命保険は上限プラス0.4%、かんぽ生命は同プラス0.5%と、やや高めの金利を見込んでいる。

生保の投資対象として金利の目安となるのは30年国債の金利だが、「入れ替えでなく、単純に買い入れる場合、30年債金利が1%を超えてから(投資を)検討することになる」(住友生命保険の松本巌・上席執行役員)。ちなみに、30年債金利はこのところ0.7~0.8%で推移している。

金利上昇と為替のボラティリティを警戒

ただ、金利上昇への備えは欠かせない。「当面、低金利環境が継続すると見込んでいる。中期的にはいずれ金利が上昇していくが、具体的なタイミングの判断が難しい。その1つとして黒田東彦・日銀総裁の退任がターニングポイントになる可能性はある」(かんぽ生命の福嶋亮介・運用企画部担当部長)という。

第一生命の重本和之・運用企画部長も「日銀はイールドカーブコントロールで20年や30年の金利をコントロールするとは言っていない。需給によっては、日銀の政策変更なしでも金利がハネ上がることがありうる。もっと長い目で見ると、2%インフレ目標の達成に近づくと、10年金利をゼロ%近辺にする目標が変更される可能性がある」と話す。

もう1つの焦点は為替レート、特にドル円相場の見通しだ。各社とも1ドル=100~125円まで、幅の広いレンジ相場を見込んでいる。太陽生命保険の根釜健・運用企画部長は「結局、日本経済は為替感応度が高く、株も金利も為替に反応する。安定的に1ドル=110円台ならポジティブ」と話すが、欧州の選挙など地政学リスクで為替相場が大きく振れる展開も予想される。

今年度も国内の超低金利とボラティリティ(変動性)の高い為替相場に悩まされそうだ。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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