「電撃更迭」でも安倍政権への影響は甚大だ ボディブローのように効いてくる可能性

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講演から30分後の午後6時、第2部の懇親会の会場で記者らは今村氏に走り寄り、取り囲んでいる。このときの今村氏は落ち着いて見えたが、記者団の側で今村氏より当選回数が1回先輩の林幹雄衆議院議員が心配そうに見守っていた。

「わかった。そういうことであるなら、そりゃもうぜひ取り消させていただく」。他意はなかったとする釈明の後、今村氏はこう述べている。これで問題は解決したと、そう信じていたに違いない。

ところが秘書官から手渡されたメモを見ると、今村氏の顔色が一転する。「皆さんにご心配というか怒られたことについては、しっかりとお詫び申し上げる」。こう言って頭を下げ、謝罪したのだ。

菅官房長官から電話

すでに会場では懇親会は始まり、志帥会会長の二階俊博幹事長があいさつしていた。

「政治はいつでも批判を浴びるが、民主主義の中で耐えていかなければならない。自ら律しながらチームワークで政治に臨んでいく。中にはいろんな人が出てくることもあるが……」

おそらくこのときの二階氏の頭には今村氏の問題はなく、その前週に女性スキャンダルで経済産業大臣政務官を辞任し、自民党を離党した中川俊直衆議院議員のことを思い浮かべていたに違いない。この日はミサイル発射が懸念された北朝鮮の「建軍節」だったが、二階氏はこれをもじって「天気がいいばかりではなく、上から降ってこなくてよかった」と冗談を飛ばした。しかし実際に二階派にはとんでもない爆弾が落ちてきたのだ。

まず謝罪したのは安倍晋三首相だった。

「先ほど安倍内閣の今村復興大臣の講演の中において、東北の方々を傷つける極めて不適切な発言があったので、総理大臣としてまずもって冒頭にお詫び申し上げる」。このあいさつの頃、今村氏のところに菅義偉官房長官から電話が入っている。

「二階さんには自民党の屋台骨として支えてほしい。志帥会あっての安倍内閣といっていいくらいだ」――。安倍首相の言葉は最大の賛辞とも解せる一方で、とてつもない皮肉にも聞こえる。二階氏は安倍首相のあいさつが終わった後、一時的に会場の後ろに姿を消した。

そして中締めの後、記者団の前に再度姿を現した今村氏は、その表情が非常に固く見えた。早速大臣辞任について聞かれると、「そこまでは及んでいない」と全否定したが、それでおさまるはずはなかった。

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