日本人が知らないハワイの意外な「ウラの顔」 観光客は気が付かないかもしれないが・・・

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「お腹、空いていますか?」と話しかけた。すでに午後3時を過ぎていたが、アーネルさんは朝からお菓子のグミしか食べていないという。そこで、一緒に近くのマクドナルドへ向かい、話を聞かせてもらうことにした。筆者が支払うにもかかわらず、アーネルさんは小さなハンバーガー1つしか注文しない。もっと注文するよう勧めると、ようやくチキンナゲットを追加した。初めは「水があるから大丈夫」と飲み物も注文しないほど、とても遠慮深い人だった。

席に座ると、アーネルさんは目をつぶって祈り始めた。クリスチャンだという。「食事を食べさせてもらえることに感謝。そして、話しかけてもらえたことも嬉しかった。私は神様に見守られている」。アーネルさんの目からは涙があふれていた。

薬物に手を出し、人生が狂い始めた

コロラドから引っ越してきたアーネルさんも、ホームレス生活を続けている(写真:筆者撮影)

アーネルさんの友人であるホームレスの男性が店内に入ってきた。彼の名前は、スマイリー。ホームレス同士で呼び合うストリートネームだという。名前のとおり、笑顔が印象的なスマイリーさんは、空き缶を拾い集めることでおカネを稼いで生活しているそうだ。アーネルさんは、1口も食べていないチキンナゲットを箱ごとスマイリーさんに渡した。日頃から、お腹を空かせたホームレスの友人たちを見ると、自分の食料配給券をあげてしまうという。

アーネルさんは祖父が米軍人だったため、高校時代はハワイで生活し、その後、アメリカ本土へ渡ったという。覚醒剤に手を出し、更生施設に入ったこともあったそうだ。その後、友人の死を機に再び薬物に手を出し、人生が狂い始め、ホームレス生活が始まった。そして「今でも、仲間が分けてくれた時にだけアイス(覚醒剤の一種)を吸っている。でも依存症にはなっていない」と話し、薬物を使用する理由について「モチベーションをあげてくれるから」だと言う。

4年前、コロラドの冬の寒さに耐えられずハワイに。数カ月間、ホームセンターで働いていたこともあったが、腰を痛めて仕事ができなくなり、再びホームレス生活が始まったそうだ。住所不特定であるうえに、心臓の持病もあり、仕事を見つけるのは非常に難しいという。

兄弟がハワイにいるが「彼らにも家族がいる。生活を邪魔するわけにはいかない」と、親戚を頼ることもないそうだ。アーネルさんに夢を尋ねると「住む場所を持つこと。家でなくていいから」と話した。

アーネルさんのような施しの精神にあふれた優しい人が、人生の階段を踏み外して困窮しているこの現実に、胸が締め付けられる思いだった。

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