悪質「不動産コンサル」の食い物になる人たち 不当な「マージン」の慣習はいつまで続くのか

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マンション管理組合が食い物にされている事例は少なくなく、発注者の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在は、以前から指摘されていた。国土交通省も、2017年1月、管理会社や管理組合の団体などに「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」という通知を出し、住民に注意喚起するよう促している。

バックマージンを受け取っている設計事務所やコンサルは、バックマージンを受け取っていないコンサルの数分の1といった格安の報酬で管理組合から業務を請け負う。その一方で、工事費の10〜20%のバックマージンを業者などから受け取っている。

マージンがなければ工事費はもっと安かった

工事代金が5千万円なら、そのバックマージンの額は500万円から1千万円にもなる。このバックマージンは、マンション管理組合が支払う工事費から出ているわけで、本来の工事費はもっと安かったはずだ。そもそも、見積もりに参加している工事業者は、コンサルがバックマージンを支払わせる約束を取り付け済みの会社ばかり、といった状況となっている。

バックマージンを受け取っている以上、工事会社に厳しくチェックや指導することなどできるはずもない。そもそも、コンサルが自分で行うべき劣化診断・建物調査や工事監理も自社で行わず、工事の受注を条件に施工業者に無償でやらせて丸投げするケースもある。バックマージンが上乗せされ、高い工事代金を払わされたうえに、品質の悪い工事などされては、発注者である管理組合としてはたまったものではないだろう。まさに踏んだり蹴ったりだ。

見積もりに参加している工事業者が、あらかじめ談合していることも多い。横浜市のとあるマンションでは、コンサルから紹介された工事業者5社の見積もりが、ほぼ5億円と同額だった。これに管理組合の理事たちが疑問を持ち、独自で工事業者に見積もりを取ったところ、3億5000万円でできることがわかった。

また、千葉県のとあるマンションでは、築40年が経過したため3度目の大規模修繕を行うことにしたとき、とある設計事務所にコンサルを依頼した。すると、組合が管理している修繕積立金額とほぼ同額である、3億5000万円の工事代金を3社が提示。「われわれの積立金を、今回の工事で使い切らせようと画策しているのではないか」と複数の理事が疑問をいだき、独自に見積もりを取ったところ、半額程度の1億8000万円で済むことがわかった。

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