それでも産みたい…「卵子凍結」する人の本音 385人の不安に、医師と経験者が回答

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Q3 若いときに採卵をすることで、妊娠しにくい体になる可能性はないのでしょうか? 採卵の際、間違ってどこかを傷つけてしまうことはないのですか?

どの年齢で行っても、採卵のリスクは同様と思われます。採卵時、多臓器の損傷、出血、感染のリスクはありますが、1%未満といわれています。実際、内膜症や筋腫などを合併した方の採卵は感染などのリスクが上昇しますが、内膜症、筋腫ともに、年齢とともに罹患率も上昇しますので、やはり若年での採卵が良い可能性はあります。

Q4 排卵誘発剤は錠剤ですか? 自己注射ですか? 個人差はあると思いますが、どんな副作用があるのでしょうか?

さまざまな剤型の薬を使用します。内服薬、点鼻薬、注射薬などがありますが、注射薬も近年は自己注射可能なものも増えていますので、通院の負担は以前より減少していると思われます。

副作用の最たるものは、卵巣過剰刺激症候群です。卵を多くとるためには、卵巣を刺激しなければなりませんが、その結果、卵巣は腫大します。刺激が強すぎた場合、女性ホルモン値が過剰となり、腹水や、胸水まで溜まってしまうリスクがあります。よって、誘発剤の刺激を最適に行うことが重要となりますので、誘発中は採血や、超音波などのモニタリングが必須です。

それでも、卵巣過剰刺激症候群を発症してしまった場合には、採卵後に入院処置が必要となる場合もあります。

Q5 卵子だけが若くても、身体が高齢(45歳以上)の場合、妊娠できないのではないか不安です。着床率は年齢とともに下がりますが、若い凍結卵子の方が、着床率は良いのでしょうか?

海外で、ご高齢(50歳前後)の方が、若い方の卵子の提供によって妊娠する事例が報告されているのはご存じだと思います。国によって背景は異なりますが、基本的に海外での体外受精においては卵子提供が一般的になっており、30代後半過ぎてからの治療では卵子提供の選択肢も説明されます。

日本においては卵子提供の法整備がなされていないため、基本的に選択肢とはなりえず、結果として海外の体外受精に比べて成績が悪いことになります。

このように、高齢でも若い卵子を用いれば妊娠は十分可能ですが、高齢妊娠のリスクを避けるためには、やはりなるべく若いうちでの妊娠が理想です。日本生殖医学会のガイドラインでは、凍結卵子による妊娠においては、45歳までに行うように、とされています。

自己注射や採卵の痛みは? 卵子凍結保存の経験者に聞く

菊地医師からの回答は、どれも明確でわかりやすいので、これで疑問が払拭された人もいると思う。だが、自己注射や採卵などに伴う痛みがどのくらいあるのかも気になるところだ。不妊治療を受けている人も同じことをしているので、経験者は一定数いると思うのだが、今回は実際に卵子凍結保存を実施した30代の女性に話を聞いた。

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