中国鉄鋼業界という「野獣」をどうするか

トランプ大統領は手なずけることができるか

 4月21日、中国の鉄鋼輸出を巡り、トランプ米大統領が同国に向けて放った第1矢は、2大経済大国である米国と中国の長年にわたる通商対立を加速させているが、中国を抑え込むほどではないかもしれない。河北省にある製鋼所で2月撮影(2017年 ロイター/Thomas Peter)

[マニラ/北京 21日 ロイター] - 中国の鉄鋼輸出を巡り、トランプ米大統領が同国に向けて放った第1矢は、2大経済大国である米国と中国の長年にわたる通商対立を加速させているが、中国を抑え込むほどではないかもしれない。

中国の昨年における対米鉄鋼輸出量は62万トンで、これは同国の年間生産量8億トンのほんの一部にすぎない。中国の生産量は世界生産量の約半分に匹敵する。

世界トップの鉄鋼生産量を誇る中国が、世界中の市場で過剰な製品をダンピング(不当廉売)しているという度重なる疑惑によって、より大きな打撃を受けているのは、鉄鋼セクターが海外での中国の過剰販売の矢面に立たされている隣国の日本や韓国かもしれない。

中国など外国製の鉄鋼製品が米国に安全保障上の脅威をもたらしているかを判断するため、トランプ大統領が調査の開始を指示した後、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で米首都ワシントンを訪れていた日本の麻生太郎財務相は、中国の過剰生産が米国やインド、日本の鉄鋼業界に損害を与えていると非難した。

中国の鉄鋼輸出は2015年、過去最高となる1億1240万トンに達したが、貿易紛争の恐れや国内需要増により製鋼所が調整を迫られるなか、昨年の輸出量は1億0849万トンとわずかに減少したと専門家は指摘する。

2月の輸出量は575万トンと3年ぶりに低水準となったが、3月は756万トンとわずかに回復した。

とはいえ、トランプ大統領の非難によって、中国が報復に出るかもしれないという懸念が再浮上しており、米国の農業従事者たちはその標的にされやしないかと危惧している。

「トランプ大統領は米国にとってベストな行動を取るだろうし、中国もまた自国にとって最善策を取るだろう」と語るのは、ASEAN鉄鋼評議会(AISC)のロベルト・コーラ副会長。

もしトランプ大統領が中国などからの鉄鋼製品に新たな関税を課すのであれば、そのような国々が反ダンピング策などの対抗策を講じる引き金となる、とコーラ氏は指摘。

「われわれは保護貿易主義の時代に戻っているようだ」

スケールの大きさとレベルの高さ

中国に過剰な鉄鋼生産能力と安価な輸出を抑制させようとするうえで、直近の2つの出来事はその課題と複雑さを示している。中国の過剰生産問題には、歴代の米政権も頭を悩ませてきた。

17日発表された関税データによると、中国の製鋼所は3月に過去最高となる粗鋼7200万トンを生産。これらは主に建設やインフラ向けとされている。

その後、中国政府は19日、鉄鋼を含む約80分野で構成される輸出を3倍に増やす計画の概要を示したロードマップを明らかにし、輸出大国としての中国のスケールの大きさとレベルの高さを強調した。

中国外務省の陸慷報道官は21日、同国が判断を下す前に米調査の方向性を解明する必要があると語った。

中国鉄鋼業界の幹部らは、過剰生産能力は中国だけの問題ではなく、解決には世界的な調整が必要であり、業界を管理するのは厳しいとの従来の主張を繰り返した。

「中国政府は製鋼所に対して輸出制限を設定しないだろう。したがって、すべての製鋼所について把握することは難しい」と、中国鋼鉄工業協会(CISA)の副会長Li Xinchuang氏は述べた。

1990年代後半から中国の鉄鋼業界を追跡している英コンサルティング会社MEPSによると、同国の鉄鋼輸出の3分の1は東南アジア諸国連合(ASEAN)に向かっており、昨年は3430万トンに達している。

韓国への輸出は昨年1230万トンに上り、中国にとって最大の市場となっており、ベトナムがその後に続く。

税制度の抜け穴

中国政府が世界へ向けて輸出全体を押し上げようとする対策を打ち出すなか、安価な輸出品に対するトランプ大統領の調査は、多くが国家から補助金を受ける企業で成り立つ同国の巨大な鉄鋼業界にとって抑止力にはなりそうもない。

中国の鉄鋼メーカーは長年、税制度の抜け穴を利用して、過剰生産分を世界の市場へと送り続けてきた。その際、自社製品に税優遇を受けるため、わずかに異なる添加物を混ぜた製品を製造している。

中国には、付加価値の付けられた鉄鋼製品を多く販売した企業に報酬を与えるリベート制度があるが、これは長きにわたり悪用されてきた。同制度により、出荷品のなかに微量の要素が添加された製品をわずかに含んでいるだけでリベートが受けられる。

前述のコーラ氏によると、リベートの割合は9─13%で、「中国の製鋼所の多くがそうだが、国有企業の補助金がそれに加えて」もらえるという。

一部の中国鉄鋼メーカーからは国内需要が増えたため輸出が減少しているとの声が聞かれるものの、リベートは、多くの製鋼所が海外のライバル企業より安価に販売できる大きな後押しとなっている。

とはいえ、今年初めの中国鉄鋼価格の高騰は、輸出製品の価格も押し上げ、同国はインドやロシアといったライバルたちと比べて競争力を失っていると、コンサルティング会社CRUのケビン・バイ氏は指摘する。

「だが中国の鉄鋼価格はそれ以来、大幅に下落しており、鉄鋼メーカーも生産量をコントロールして価格を維持しようとメンテナンスを開始している」とバイ氏は述べ、国内需要が上向かないなら、輸出を増加させる可能性があると付け加えた。

「政府は輸出増加を望んでいないが、それもにわかに信じ難い」

(Manolo Serapio Jr記者、Muyu Xu記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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