「迷走気味の民主党」が米国最大のリスクだ 米国政治の機能不全を増幅しかねない

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ところが、サンダース議員が追い求めるのは、さらに過激な保護主義である。すでに大統領選時から、トランプ大統領はサンダース議員の通商政策を称賛していた。最近の米国では、トランプ大統領が中国を為替操作国に指定していない点などを捉え、民主党の議員たちが、「トランプ大統領の通商政策は生ぬるい」との批判を繰り広げている。民主党による批判は、トランプ大統領の保護主義を是正するどころか、さらに歪んだ方向に導くリスクすら指摘できる。

政策面で方向性が見いだし難い中で、民主党にとっての安易な選択は、ひたすらトランプ政権への抵抗勢力としての存在感を高める道である。しかし、こうした戦略は、米国政治の機能不全を増幅させかねない。

予算審議のカギを握るのは民主党

米国では、ほとんどの法案を可決するために、上院で60票以上の賛成票が必要となる。上院における共和党の議席数は、52議席にとどまる。トランプ政権といえども、民主党に助けを求めなければならない局面は、いずれ必ず訪れる。

その典型が、連邦政府の予算審議である。毎年度の歳出を決める法律を可決するためには、上院で60票以上の賛成票が必要だ。予算が立法化できなければ、政府機関は閉鎖に追い込まれる。混乱回避のカギを握るのは、民主党議員の出方である。

米国では、2017年度の暫定予算が、4月28日に期限切れとなる。その日までに予算措置が講じられなければ、トランプ政権の発足から100日目となる4月29日に、政府機関が閉鎖に追い込まれる。

トランプ政権発足から100日は、民主党が「完全野党」になって100日でもある。このまま単なる抵抗勢力となって、米国政治の「お荷物」に成り下がるのか。民主党もまた、正念場を迎えている。

安井 明彦 みずほリサーチ&テクノロジーズ 調査部長

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やすい あきひこ / Akihiko Yasui

1991年富士総合研究所(現みずほ総合研究所)入社、在米日本大使館専門調査員、みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長、同政策調査部長等を経て、現職。政策・政治を中心に、一貫してアメリカを担当。著書に『アメリカ 選択肢なき選択』(日本経済新聞出版社)などがある。

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