「迷走気味の民主党」が米国最大のリスクだ 米国政治の機能不全を増幅しかねない

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加えて、4月に入ってから下院の補欠選挙で立て続けに惜しい勝利を逃している。中央情報局(CIA)局長となったマイク・ポンペオ氏の後任を決めるカンザス州の補欠選挙では、予想外の接戦ながら、共和党の候補が逃げ切った。厚生長官に就任したトム・プライス氏の後任を選ぶジョージア州の補欠選挙でも、共和党の候補が乱立したにもかかわらず、1回目の投票で民主党の候補が過半数の票を獲得できず、決選投票に持ち越された。

今後の補欠選挙や州知事選挙でも、民主党が確実に勝てそうな機会があるわけではない。このままだと、せっかくの「反トランプ」の盛り上がりも、政権発足から100日の節目を超えて長続きさせることは、そう簡単ではないかもしれない。

「経済ポピュリズム」に傾くか

こうした中、民主党内に根強いのが、「経済ポピュリズム」へと大胆に軸足を動かすべきだ、という声である。これは、政府の力を最大限に生かすことによって、中間層の暮らしを助けるという考え方で、いわば、昨年の予備選挙で旋風を巻き起こした、バーニー・サンダース上院議員の路線である。トランプ大統領を支持した中西部の労働者の支持を取り戻すには、経済に的を絞った戦い方が必要だ、というわけだ。

サンダース議員と並ぶ「経済ポピュリズム」の雄に、エリザベス・ウォーレン上院議員がいる。ウォーレン議員は、近著『This Fight Is Our Fight(これは私たちの戦いだ)』で2016年の大統領選挙を振り返り、「バーニーはすばらしかった」と絶賛。そのうえで、中間層が直面する経済的な困難に論点を絞り、富裕層や大企業を優遇する共和党の「小さな政府」路線を徹底的に批判することこそが、民主党の進むべき道だと説いている。

とはいえ、サンダース路線が民主党を建て直す起爆剤になるかについては、党内でも意見が分かれている。ヒラリー・クリントン氏は、中絶反対や寛容な移民政策、さらにはLGBTの権利擁護などを通じ、多様な民主党の支持者に働きかける戦略を採用した。経済に特化したサンダース路線では、そうした支持者にそっぽを向かれるリスクがある。

そもそも昨年の大統領選でのクリントン氏の敗北が、経済政策でのメッセージの弱さによるものだったともかぎらない。トランプ大統領を支持した中西部の労働者は、白人に偏っている。移民に対する反感など、人種問題の要素があるのは間違いない。

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