「中国逆回転」ー高成長路線の矛盾が噴出ー 過剰投資の裏で「影の銀行」が急拡大

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4兆元政策が残した膨大な負の遺産

胡錦濤政権時代には、雇用維持のために8%の経済成長率を維持することが至上命題とされてきた。リーマンショック後の2008年末には、景気テコ入れのために総額4兆元の景気刺激策を実施した。

これにより、中国経済はV字回復を遂げたものの、もともと高い投資への依存度を、さらに引き上げることになった。ストックが過剰に積み上げられたことで、投資の収益率はどんどん下がっていく。成長を維持するためにより多くの投資を必要とする悪循環に中国は陥っていた。

総人口に占める生産年齢人口の比率の上昇が経済成長を後押しする、「人口ボーナス」の終焉も近い。成長するための体力は確実に落ちていく。一時的に成長率を落としても、財政と借り入れに依存した過剰投資システムを断ち切る必要がある。だが中国は、現実には逆の方向に走ってしまった。そのツケは、現政権にすべて回された。

最近になって、新たに浮上したのが、「影の銀行」(シャドーバンキング)問題だ。通常の銀行システムによらない金融取引のことで、4兆元政策以降に急拡大した。

地方政府が主導する野放図なインフラ投資や不動産開発を、中央政府は銀行融資を絞ることで制御しようとした。ところが、地方政府側は銀行を通さないファイナンス手法を使うことで、その規制をすり抜けた。オフバランス取引の拡大に商機を見いだした銀行も、それに乗った。

中国では倒産法制が有効に機能しておらず、破綻状態にある事業でも地方政府のバックアップで生き永らえるケースが多い。影の銀行の増殖は、そうしたモラルハザードをさらに蔓延させる危険がある。これでは最適な資金配分ができず、全体の効率は低下するばかりだ。

2ケタ成長を忘れられない「悪い生活習慣」を変えないことには、中国経済の病状はどんどん重くなる。

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