「鉄道フォーラム」はネットの歴史そのものだ パソコン通信から刻んだ30年の歴史

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「NIFTY-Serve」とは、日商岩井と富士通が折半出資したエヌ・アイ・エフ(NIF)株式会社が運営するサービス。NIFは日商岩井と富士通の頭文字を合わせたものといわれることが多かった。しかし、当時から一貫して「Network Information Forum」の頭文字をとったものと説明されていた。

社名にあるとおり、先行2大事業者との差別化のために「NIFTY-Serve」は「フォーラム」サービスを前面に打ち出した。サービス開始に先立つ発表会で配付された資料には、次の一文がある。

「ニフティ・サーブの最大の特徴となるフォーラムは、それぞれのなかに電子掲示板、10個の電子会議室、10個のデータライブラリーをもち、一つ一つがパソコン通信ホスト局並みの機能を備えています」

当時、利用料は1分間10円となっていたが、利用するにはNTTの電話回線が必要なため、市内にアクセスポイントがある都市部の会員でも、3分10円の電話代と合わせて、3分40円が必要だった。さらに、当初は1万円もするメンバーズパックを購入する必要があったため、パソコン系のフォーラムはスタートダッシュしたものの、鉄道フォーラムをはじめとした文化系フォーラムはスロースタートとなった。

通信の高速化とともに運営ノウハウを蓄積

パソコン通信の利用者は年を追う毎に増えた。それは想定以上だったようで、やがてメンバーズパック不要で入会可能となり、スタート時の特価だった1分10円が値上げされることはなく据え置きとなり、さらに1分8円への値下げもされた。

当初、回線スピードは毎秒300ビットもしくは1200ビットだったが、年を追うごとに高速化していった。結果、当初は送られてくる文字をモニター上で順に読める程度の速度だったのが、オンラインで読むにはあまりに高速となったため、オンラインでログを取得し、オフラインで読むのが当たり前となった。

また、より便利に利用できるようにと、NIFTY-Serveに最適化した自動巡回ソフトがソフトウェア系フォーラムから生み出されるようになっていく。ハード面でも、当初はフロッピーディスクでソフトを立ち上げ、フロッピーディスクに記録していたのが、ハードディスクが素人でも買える価格となったおかげで、カナ漢字変換が圧倒的に速くなった。それにつれ、フォーラム会員同士でリアルタイム会議室(チャット)の利用が進み、特に鉄道フォーラムでの同サービス利用はNIFTY-Serve内でも有数といわれるまでになっていった。

1991年には、NIFTY-Serveのサービス提供会社が、創業時のエヌ・アイ・エフ株式会社からニフティ株式会社となる。1992年1月1日には、鉄道フォーラムの運営を筆者が先達から受け継いだ。

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