(第15回)今、求められる採用ブランディングとは何か(前編)

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採プロ: ありがとうございました。それでは次にJCBの久保寺様にお伺いします。同じ質問になりますが、今年の採用活動の特徴についてお聞かせください。

JCB: まず前提として業界に逆風が吹き、当初からかなり厳しい採用活動になることが想定されました。その中で数年前から採用のキーワードとなっている「多様性」を維持し、質を落とさずに採用することが大きなポイントであり、課題でした。

採プロ: 事前に予測された厳しい環境の中で、どのような試み、工夫をされたのかというところをお聞かせいただけますか?

JCB: 我々の会社の一つの特徴である様々な企業様との接点、つまり多様性をうまく活用できないものかなと考えまして、「コラボレーション型の1Dayインターンシップ」というものにトライしました。具体的には、異なる業界の企業様と共同で1Dayインターンシップを開催し、クレジット業界にまだ関心を示していない学生さんを集めようと考えたわけです。

採プロ: 規模や時期についてはいかがでしょう?

JCB: 1回につき100名くらいの規模で10回程度、時期は夏を中心にやらせていただきました。結果も非常に良好でした。当社は高い知名度の割に事業や業務内容を知ってもらえていません。インターンシップを起点にした口コミが最終選考まで効果的に作用したと思います。

採用プロ: その他の取り組みもかなりユニークなことをしたとお伺いしていますが。

JCB: ひとつは中学・高校への出前授業です。より早い年代から、採用に関係なく、「クレジットカード」というキャッシュレスの仕組みや「JCB」という会社をきちんとした姿で知ってもらおうという位置づけでアプローチをしようというのが目的です。次にキッザニア東京へのスポンサード。これも同じ観点ですね。低年齢世代に対して少しでもキャッシュレスの利便性を知ってもらうことがねらいです。

採プロ: 厳しい採用環境下で、更に業界人気が非常に厳しい逆風を予測し、ただ単純に募集の広告量を増やすのではなくて、違う切り口での出会いというのを創出されたと。次に次世代戦略とも言うべき取り組み。中長期的な採用戦略にいち早く取り組んでおられるということですね。最後にワークスアプリケーション(以下W・Aに略)の小島さんにお伺いします。御社は採用手法自体が非常に個性的ですので、今年はというよりもこの間取り組まれてきた「問題解決能力発掘インターンシップ」についてお聞かせ願えますでしょうか?

W・A: 2002年の夏の第1回目から「問題解決能力発掘」と冠したインターンシップに取り組んでいます。人の能力は面接や筆記試験だけではそう簡単にはわからないだろうという経営者の思いを受け、ハードな課題に実際に取り組んでもらった結果をもって、その人の能力を判断しようというのがそもそもの考え方です。実施の概要は、1ヶ月間(平日のみ19日間)で、春と夏に2回実施しています。応募総数は18,000名程度で、結果的にはおよそ1割の1,800名前後の学生さんに参加いただいております。
 そして、1ヶ月後に、ある一定水準以上の成果が出せれば「パス」というものを出します。「パス」には「AとB」があり、極めて高いレベルにあることを示すのが「Aパス」で、5年間いつでもW・Aに入社できるという意味です(「Bパス」は3年間)。パスの取得者は参加者全体の3割前後くらいですね。

採プロ: 日本企業の採用にはない形であり、発想だと思いますが、このユニークな採用が意図するところをお話いただけますか?

W・A: 一つは前述しました通り、人の能力は面接と筆記試験ではそう簡単にはわからないので、追い込まれたときや、抽象度の高い課題や事象に当たった時に、どれだけ自分の頭の中で考えて最終的に具現化できるのか、これを問題解決能力の一部であろうと思い、課題設定と運営を行っています。もう一点は、まったく知名度のない2002年に初めて新卒採用に取り組んだときに、普通の採用手法では優秀な人材、意識の高い学生がおそらく集められないという仮説に立脚し、マーケティング的な立場に立ったことです。

採プロ: 一般的に考えると、19日間拘束して、難易度の高い課題を与えるとなると、そもそも学生集めが大変じゃないか?そんなに集まるものですか?というのが疑問として挙がると思うのですが、その辺はいかがでしょう?

W・A: 最近は社名よりも「なんだか変わったインターンシップをやっている会社」という口コミ効果による知名度アップが大きいですね。最終的に就職先としてワークスに興味は無いが、自分の力を試してみたいという学生さんの参加も結構あります。それについては「良し」と割り切っていますので、夏のインターンシップは、春と比べると集められるかなと思います。日本のクリティカル・ワーカーが興奮できるフィールドを常に提供し続けるような企業を作りたいという思いが起業理念ですので、優秀な人材を惹きつける取り組みにはどん欲にコストも時間も相当かけています。

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