「メイド・イン・アメリカ」の復興は前途多難だ 組立工場を中国から米国に戻したものの…

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米国に生産拠点を持つサプライヤーを見つけることは、現時点で、「われわれのサプライヤー基盤における、最も難しい挑戦だ」と米小売り大手ウォルマート・ストアーズ<WMT.N>のシンディー・マーシグリオ国内製造・調達担当副社長は語る。

米国製品に対する消費需要の高まりを受け、ウォルマートはモンスター・モトを含めたいくつかの米社と提携し、2023年までに米国製品調達を2500億ドル(約27兆2000億円)増やすことを目指している。

ただ、米国人の愛国的な消費習慣にも、価格面での限界があることが彼らの経験から明らかとなった。

モンスター・モトの場合、バイクを1台249─749ドルで販売しているが、価格に敏感な客がより安い中国製のライバル製品に流れることを恐れ、値上げには踏み切れないと同社のCEOは語る。

「箱に『メイド・イン・アメリカ』と書いてあれば、消費者が(値上げの)フリーパスをくれる訳ではない」と同CEOは言う。「価格競争力を維持しなければならない」

工場の労働コストに目を光らせることは、米国の製造業者にもコントロールできることだ。彼らは、組み立てラインで働く、主に低スキルな労働者をロボットに置き換えることが、米国で生産しつつ、コスト競争力を保ち、商業的に成功する唯一の道だと考えている。

これはトランプ氏が大統領選で勝つために使った説明とは、真逆の傾向だ。

大統領就任後も、トランプ氏は過ぎ去ったアメリカ製造業の栄光を復活させ、数百万の雇用を再創出する公約を掲げ続けている。大統領は先月31日、「アメリカの繁栄泥棒」に終止符を打つため、貿易ルールを悪用する国の取り締まりを強化するよう、政権に指示した。

製造現場の状況はより複雑

だがモンスター・モトのような企業の製造現場では、状況はより複雑だ。

「まるで人々は、製造拠点を地球上のどこかからプラグの様に引き抜き、米国に差し込んでも、万事支障ないと考えているかのようだ」。貨物輸送大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)のデビッド・アブニーCEOはそう語る。

UPSは、モンスター・モトが中国製部品をラストンに輸送できるようサプライ・チェーンの再構築を手助けした。「(製造拠点の米国移転は)すぐに実現できることではない」

トランプ政権による製造業の国内回帰に向けた取り組みは、規制緩和と製造業労働者に新たなスキルを学ばせるプログラムの拡充に重点を置く、とホワイトハウスの高官は説明する。

「米国に回帰する製造業の雇用が、前に出て行ったものと全く同じにはならないだろうことは承知している」と同高官は語る。「われわれは、アメリカの労働者が対応できるよう手段を取っている」

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