新SNS「マストドン」が急伸している根本理由 中央集権的な従来型SNSとは何もかもが違う

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マストドンのタイムライン(時系列順に並ぶ”書き込み”のこと)がどのようになっているのかが重要だ。マストドンでは自分がフォローしている相手の書き込みを表示するモードのほか、「ローカル(同一インスタンス内のトゥート)」と「連合(同一インスタンス内の利用者がフォローしている他インスタンス利用者のトゥートも含むタイムライン)」という、ふたつの閲覧モードがある。まずは一定水準のコンセンサスが得られるだろうサーバを選び、IDを登録、共感したユーザーをフォローしやすい仕組みを整えた。

注目すべきは、ツイッターとマストドンのどちらが意見交換を活性化させやすいか、だ。ツイッターの場合は大海に放り投げられるようなもので、多くの人にとっては何をしていいかわかりにくく彷徨うことが多い。それに対して、マストドンはあらかじめ興味の方向が絞られているため、最初から彷徨うことがない。

「ニコニコ動画」の成長理由と似ている

最終的にこのシステムが、どこまで巨大化していくか予想することは難しい。マストドンは民主的なシステムとも言えるが、問題もある。自由な拡張ができるうえ、中央集権的なコントロールがされていない分、大きなリスクが存在する。

マストドンのインスタンスは個人が自由に作成可能で、それぞれインスタンスごとにIDを取得するよう設計されている。異なる趣向のインスタンスに複数登録する使い方が一般的だ。ところが、各インスタンスの運営者は前述したように誰なのかわからない。もし悪意を持つ運営者だった場合、パスワードの盗難や投稿メッセージの監視のリスクがある。

リスクはある。とはいえマストドンがどう成長していくのか、そのプロセスを追いかけることはソーシャルネットワーク時代のビジネスを考えるうえでは重要な参考事例になるだろう。

この事例は、かつて「ニコニコ動画」が成長した理由とも類似している。ニコ動は動画を中心に同じ趣味や感性、考え方を持つ利用者を吸引し、さまざまなサブカルチャーのコミュニティを活性化させた。

たとえ実社会での距離感が遠い者同士でも、仮想社会では近い距離感でコミュニケートできる。マストドンは、そんなソーシャルネットワークならではの成功例となるはずだ。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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