トヨタの「存在感」が実は薄くなっているワケ 軽視気味だった「EV」が世界で台頭してきた

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自動車業界における対決の構図は激変している(写真:AP/アフロ)

トヨタ自動車が昨年12月に立ち上げた社長直轄で電気自動車(EV)の開発を担う社内ベンチャー組織「EV事業企画室」に参加する人数が7倍以上の30人まで増えていることがわかった。発足当初、次世代エコカーの開発を担う重要な組織がわずか4人でスタートしたことが話題になったが、今後も人員拡充し、2020年までのEV量産化に本腰を入れ始めたようだ。

同企画室は4代目となる現行ハイブリッド車(HV)「プリウス」の開発責任者を務めた豊島浩二氏をヘッドに、豊田自動織機、デンソー、アイシン精機のトヨタグループ御三家からも各1人ずつを集めた計4人のごく少人数でスタート。開発初期からトヨタグループが参画するのは初めてのケースだ。

当時、豊田章男社長は「ベンチャー組織として、その分野のことだけを専門に考え、スピード感のある仕事の進め方改革を牽引してほしい」としていた。トヨタグループの技術ノウハウやリソーセスを活用するとともに、小さな組織で従来とは異なる仕事の進め方でプロジェクトのスピードアップを図り、EVの早期投入を目指す狙いだ。

週刊東洋経済は4月24日発売号(4月29日-5月6日合併号)で『トヨタの焦燥』を特集。北米市場、次世代車の開発競争、系列改革の3つに分けて、もはや世界トップクラスの自動車メーカーになったトヨタの難題に迫っている。

トヨタはEV開発については及び腰だった

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トヨタはこれまで走行中に排ガスを出さないゼロエミッションの次世代エコカーについて、水素を燃料にした燃料電池車(FCV)の開発を最優先し、2014年にFCV「MIRAI」を世界で初めて発売した。ところが、EV開発については及び腰だった。1回の満充電で走行可能な航続距離が短く、電池コストも高いことがネックとみていたからだ。「次世代エコカーの本命はEV」とみて、EV車「リーフ」の世界販売に注力してきた日産自動車とはまったく異なる戦略だった。

だが、状況は一変。ディーゼル燃費不正のあったフォルクスワーゲン(VW)グループがEVシフトを鮮明化した。2016年に新車販売が1031万台を記録し、トヨタを抜き初めて世界首位に立ったが、VWグループのマティアス・ミュラー会長は今年3月の年次記者会見で「台数は結果でしかない」と興味を示さない一方、「将来のEVで世界のマーケットリーダーになる」と力強く宣言。2025年までに30車種以上のEVを投入する予定だ。年間販売台数は200万~300万台を目標にし、新車販売の25%をEVにする方針を示す。

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