フランス大統領選を投票率から直前予想する マクロンかルペンか、4候補が大混戦だが…

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今回の大統領選で投票結果を左右するとみられているのが投票率の行方だ。産業構造の変化や都市化の進展に伴い有権者の政治離れが指摘されるのは先進国に共通する現象だが、フランスの大統領選挙の投票率は最近でも80%前後と非常に高い。フランス革命の伝統によるものか、2回投票制による直接選挙で為政者を一本化していく国民参加型の選挙プロセスもあり、フランス国民の間で大統領選挙への関心は高い。

だが、今回の大統領選では決選投票への進出が有力視される4候補のうち3候補が非主流派政党の出身。有権者の二大政党離れが顕著なうえ、選挙戦の争点も失業、年金、治安、テロ、欧州統合、政治腐敗と多岐に渡り、投票直前となった今も態度を決め兼ねている有権者が多い。世界的な関心を集めているのとは裏腹に、過去の大統領選と比べて投票率が低くなるとの指摘もある。

低い投票率はルペン、フィヨンの2候補に有利

投票率の低下は一般に、固定票の多いルペン候補やフィヨン候補に有利に、浮動票の多いマクロン候補やメランション候補に不利になる。決選投票に進出する2候補の組み合わせが、世論調査が示唆するマクロン候補とルペン候補の顔ぶれとなった場合も、決選投票ではマクロン候補がルペン候補を破るとの見方が支配的だ。初回投票で敗退した候補を支持していた有権者票は、穏健中道路線のマクロン支持に流れる割合が圧倒的に高いとみられているためだ。

だが、初回投票での投票率が低くなると、こうしたシナリオへの不安が広がる恐れがある。この点、やや気懸かりなのは、初回投票が行われる4月23日が復活祭休暇に重なること、決選投票が行われる5月7日が3連休の中日(なかび)であることだ。

日本では今、「働き方改革」が何かと話題になるが、フランス人が休暇好きなことは読者もご存知だろう。夏の長期休暇(バカンス)以外にも、日本のお盆に相当する秋のトゥーサン休暇、年末のクリスマス休暇、2月の冬休み、春の復活祭(イースター)休暇があり、それぞれ丸々2週間学校が休みになる(土日も含めると17~18連休に!)。

フランスでは子供の学校休暇に合わせて家族で休暇を取るのが一般的なようだ。今年の復活祭は4月16日だったが、先週は筆者が勤める日比谷界隈でも外国人観光客がひときわ多かった印象がある。イースター休暇に合わせて日本に旅行に来ていたのではないだろうか。フランスでは全国を3つの地区に分け、この2週間の学校休暇を各地区でずらしている。初回投票が行われる4月23日は3つの地区のうち2地区が学校休暇と重なっており、これもまた投票率の低下につながる可能性がある。

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