シリア空爆の裏でトランプ氏がしていること 国際援助を大幅縮減する米国の前途

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だが、トランプ大統領は国連難民高等弁務官事務所の予算40億ドルに対する米国拠出分も、15億ドルのうち5億ドル超をそぎ落とすつもりだ。これこそ、シリアの化学兵器使用に嫌悪感を示しながら、トランプ大統領が行っていることである。

むろん、シリア情勢に戦慄(せんりつ)するのは正しい。11年以降の死者は50万人近くに達する。国外難民は500万人を突破した。軍事行動だけでは問題は解決しない。

国際援助縮減は愚かな行為

トランプ大統領が頼りにするジェームズ・マティス国防長官は、「国務省の予算が十分でないと、もっと弾薬を買うことになる」と、国際援助縮減の愚かさを指摘した。共和党のミッチ・マコーネル上院院内総務も、「外交のほうが軍事介入よりはるかに安くて効果的だ」と語っている。

難解な予算策定プロセスのせいで、人道危機から目がそらされてはならない。世界に救いの手を差し伸べてきたのが米国だ。その伝統を捨てて問題を悪化させる側に回れば、米国が掲げる価値観を否定するに等しい。トランプ政権が進もうとしているのは、まさにこの道筋なのだ。

グレゴリー・マニアティス 米移民政策研究所シニアフェロー

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Gregory A. Maniatis

米国ワシントンにある移民政策研究所で欧州政策を担当。ピーター・サザーランド国連国際移住担当事務総長特別代表の顧問

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