イオン「数値目標なき改革」で問われる本気度 総合スーパーに加え、グループ再編も焦点に

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組織の見直しも進める。「グループが大きくなり、社員が官僚化していた」(岡田元也社長)。東北や南関東など六つのエリアカンパニーに仕入れや売り場作りなどの権限を移譲。地域ごとの特性に合わせた専門性の高い店舗作りを推進する。人事制度も改め、転勤のない地域限定社員が部長や店長など幹部に昇進しやすくした。

GMSの利益率はわずか0.1%

だが、構造改革は道半ばだ。4月12日、イオンは2017年2月期決算を発表した。売上高に当たる営業収益は8兆2101億円(前期比0.4%増)、営業利益は1847億円(同4.4%増)。堅調な業績に見えるものの、営業収益の4割近くを占めるGMS事業の営業利益は24億円(同69億円の減益)と、赤字すれすれの水準だ。

CMや新聞広告を減らし販売管理費を抑制したが、旧ダイエー店舗のイオン移管に伴う店舗運営の混乱が尾を引いた。営業利益率にして約0.1%。金融事業の16.6%や不動産事業の14.8%と大きな開きがある。

さらにイオンは金融、不動産をはじめ多くの子会社が上場しており、上場子会社が稼いだ利益のうち、イオン以外の少数株主に帰属する利益は連結の純利益に反映できない。イオンの営業利益と純利益の乖離が大きいのはこのためだ。

本業であるGMS事業で安定的に利益を生み出さないかぎり、純利益の低空飛行は続くことになる。決算と同時に発表した2020年2月期までの中期経営計画では、GMSの収益構造改革を引き続き最優先課題に挙げた。

「デフレ脱却は大いなるイリュージョンだった」(岡田社長)。まず仕掛けるのが、値下げだ。イオンでは4月から順次、PB(自主企画商品)の「トップバリュ」15品目、NB(メーカーブランドの商品)239品目を値下げする。消費者の生活防衛の意識が高まっていることに加え、「ネット販売における価格低下の影響もある」(同)。

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