ミスターミニット「ダメ会社」が再生した理由 「主演・脚本・監督、俺」の29歳社長の変化とは?

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司会:遠藤先生もご著作『現場力の教科書』の中で「競争戦略はオペレーションに対して優位になりがち」として、現場軽視の経営に警鐘を鳴らしていますね。

ミスターミニットの迫俊亮氏(左)と「現場力」を提唱した第一人者の、経営学者遠藤功氏(右)(写真:筒井智子)

遠藤:もちろん戦略は大事ですが、しょせん仮説。やってみないとわからないわけです。つまり、「戦略よりも実行のほうが上位」なんですよ。じゃあ、仮説を実行するのは誰かといえば、現場で働いている社員でしょう。だから、現場の仲間をどうやってその気にさせるか、どうやって結果が出るまで粘ってもらうかが最も大事なんです。経営者は1人じゃなにもできないんですから。

:はい、身にしみてよくわかりました。ミスターミニットは1999年からファンドを4社経ているんですが、その間、ファンドの優秀なスタッフやコンサルタントによってさまざまな戦略が練られていました。それでも、業績は悪化の一途をたどっていた。では戦略が悪かったのかというと、そうではありません。当時に練られた戦略って、売り上げがV字回復して利益が2倍になったこの3年間の施策とあまり変わらないんですよ。

遠藤:なるほど、まさに「実行」が明暗を分けたわけだ。

部長以上の3分の2が現場出身者

遠藤:「実行」する組織をつくるためには、人事が肝になります。迫さんも、社長になったタイミングで大胆な抜擢人事をやりましたよね。

:そうですね。そうですね。ミスターミニットにはそれまで現場出身の部長以上の役職者がいなかったのですが、清水という社員を史上はじめて部長に昇格させました。

遠藤:その人事がきっかけとなって現場から信頼されるようになったのでしょうね。

:そうだと思います。ただ、はじめはその抜擢人事も本人に「嫌です」と断られていたんです。しかも、3回も(笑)。

遠藤:へえ!

:それでも粘ったのは、中間管理職であるエリアマネジャーたちに「誰に上司になってほしい?」と聞くと、口をそろえて彼の名を出していたからなんです。3回目に断られたとき、彼から「迫さんが社長になるんだったら僕も覚悟を決めます」と言われたので、株主と交渉して、社長にしていただいて。結果、彼を昇格させることができて、そこからいろいろなことがうまくいくようになりました。

遠藤:人事は経営側からの最大のメッセージですからね。たとえば、「現場を大事にする」と言っておきながら「この人がこのポジション?」と思われるような人事をすれば、「口ばっかり」と見抜かれてしまうでしょう。

:ええ。清水に始まり、現在は部長以上の役職者の約3分の2が現場出身者です。これが、「この会社は現場中心なんだよ」というなによりのメッセージだと思っています。

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