「トランプのアメリカ」でFRBは受難の時代に BNPパリバの米国チーフエコノミストに聞く

拡大
縮小

――財政拡張の規模が当初想定されていたより小規模になることは、米国経済にとってむしろ好ましいのでは。

そうだ。いまの(景気循環)サイクルにおいて、米国経済は大規模な財政拡張を必要としていない。あまりに大規模な財政拡張を行えば、これに対応してFRBが引き締めに走り、リセッションに陥る危険性がある。財政拡張のベストタイミングはおそらく次の景気後退期である2019年だろうが、トランプ大統領は次の中間選挙である2018年11月までに何か成功したという材料が欲しいと思っている。

――具体的には何を打ち出してくるのでしょうか。

国境調整税はおそらくない。導入すればインフレ率が上昇し、むしろ白人労働者にはマイナスだ。小売業者からの反対も大きい。おそらく税制改革が最大の優先事項で、インフラ投資も政府自身が大規模に支出することにはならないだろう。

オバマ政権にもドル政策はなかった

――政権における経済政策のキーマンは誰か。

ムニューシン財務長官だ。特に税制改革に関して重要だ。ただ、大統領がいったい何をいちばん望んでいるのか、あまりクリアでないという問題がある。

――ドル政策について、ムニューシン長官とトランプ大統領の発言は微妙に食い違っています。「強いドル政策」は変更されるのですか。

ドル政策については、かなり混乱を来している。ムニューシンはドルが過激に上昇することは望まないが、逆も望まない。政権内からこのように整合性のない発言が出てくるのは、必ずしもステューピッド(愚か)なことではないと思う。そもそも米国は強いドル政策を長い間、掲げていたわけではなかった。オバマ政権にはドル政策はなかったと言える。

――トランプ大統領は経済政策のことをよくわかっていないという見方もあります。

そもそも大統領はすべての分野において、専門家たりえない。トランプ氏はむしろこう言うだろう。あまりに過度に専門家に依存すると、経済は低成長になり、生産性は伸びず、デフレに陥り、多くのアメリカ人の生活水準が低くなってしまう、と。

フィナンシャル・タイムズのマーチン・ウルフのように、トランプ氏は愚かで、何をやっているかわかっていないと言う人がいるが、彼が2020年に再選されるかどうかを決めるのは、経済学の試験の結果ではなく、彼に投票した米国人にとって、どんな結果が出せたかということだ。

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