メイ英首相が突然の解散総選挙に動いた理由 再び「絶対に負けられない戦い」に挑む

拡大
縮小
4月18日に下院の解散、6月8日の総選挙を発表して国際社会を驚かせた英国のメイ首相(写真:ロイター/アフロ)

4月18日、英国のメイ首相は緊急声明を発表し、下院を解散して2020年5月に予定されていた総選挙を今年6月8日に前倒し実施する意向を明らかにした。演説においては「現政府を支持するか民意を問い、より安定した政権をつくる」と述べて、来たるべき離脱交渉に向けて「安定した足場」を確保することが前倒し選挙の最大の理由であることを示唆した。

争点はもちろん英国のEU離脱(ブレグジット)だ。離脱方針自体は昨年6月の国民投票で確認されているため、正確に言えば、メイ政権が掲げる「単一市場からの完全撤退を主軸とする離脱(ハードブレグジット)」にするのか否かが、争点と言える。

EU離脱関連法の審議滞りを避ける狙い

現状、野党・労働党を筆頭とする勢力は離脱方針に賛意を示しつつも単一市場へのアクセスも確保したい離脱(いわゆるソフトブレグジット)を主張しており、今後の離脱交渉では政府・与党の足枷になることが予想される。なお、下院650議席の勢力図は保守党が330議席、労働党が229議席、スコットランド民族党(SNP)が54議席、自由民主党が9議席、その他が28議席である。

現状では保守党議員の離反があって、野党勢力と結託すれば、離脱関連法案の審議が滞る可能性もある。後顧の憂いは断てるうちに断ちたいという思いはあって当然である。また、そもそも選挙で選ばれていないメイ首相に交渉を任せることへの風当たりが強かったことも今回の判断に影響しただろう。離脱交渉が本格的に軌道に乗る前に、反対勢力を議会から一掃しておきたいというのがメイ首相の真意と見られる。

次ページ「行き当たりばったり」の象徴
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT