外国人に負けない!"不敗神話"を築いた交渉術 いつでも「次の手」を忍ばせておけ

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相手にお願いしているうちは、交渉にならない

この「交渉が成立しなかった場合の次善策」をBATNA(バトナ)と呼ぶ。Best Alternative To Non-Agreementの略だ。

交渉はより強いBATNAを持っているほうが勝つ。あらかじめ自分の手持ちのカードがわかっていれば、必要以上に相手に譲歩することもないからだ。逆に、相手に選択肢がなければ、大幅な譲歩を引き出すことができるかもしれない。交渉の成否は事前の準備でほぼ決まるといってよい。

それがわかってから、私は相手が誰であっても交渉で負けることがなくなった。だが、日本アイ・ビー・エムに新卒入社したての20代の頃の私は、外国人相手の交渉では全戦全敗だった。

当時、私の主な交渉相手は米国人だった。アジア太平洋地域の製品プランニングプロセスの業務責任者として、仕組みをゼロから立ち上げて運用するのが私の仕事だった。何もない状態から米国本社やアジア太平洋地域の担当者と合意を取りながら仕組みを改善していく。毎日が海外との交渉だ。だが、この交渉が思ったようにいかないのだ。

私のやり方はこうだ。われわれが困っていることをまとめ、こちらの要望を整理して、相手に訴えかける。しかし、こちらがいくら困っているといっても、相手はなかなか動いてくれない。相手にお願いする→理由をつけて却下される、の繰り返しだった。

日本人同士ならば「こんなことで困っている」「ならば、こうして解決しよう」と話が進む。だが、なぜかこれが米国人には通じない。私にとってはカルチャーショックだった。

まずはこのやり方で半分勝てるようになった

何度も失敗を繰り返した結果、私は方針を変えた。お願いするから、相手はこちらの足元を見て動いてくれないのだ。どうやら相手は、自分の業務にメリットがあるかどうかで判断しているようだ。こちらのメリットを主張するだけでなく、相手のメリットもさりげなく伝えて交渉すればよいのではないか?

そこで、自分が困っていることだけでなく、もう少し視野を広げて相手のメリットも考え、提案の中に盛り込むようにした。Win-Winの提案である。

その結果、全敗だった状況は脱して、なんとか半分程度は勝てるようになった。だが、それでも半分は思いどおりの結果が得られない。ここで再び悩んだ。相手のメリットは明確なのに、なぜ相手は動いてくれないのだろうか?

次ページそして全戦全勝できるように…
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