教育無償化は「働き方改革」にも繋がっていく 教育投資の必要性と財源負担を訴えるべきだ

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国公立大学の授業料を無償としている国や地域は増えている(写真:Syda Productions/PIXTA)

その時々の政策への関心が移ろいやすいのは今に始まった話ではなかろう。その移り気な永田町界隈でにわかに注目を集めているテーマがある。教育費の無償化をめぐる議論だ。

きっかけは、1月20日の安倍晋三首相の施政方針演説だった。「どんなに貧しい家庭で育っても、夢をかなえることができる。誰もが希望すれば高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければならない」と、高等教育の無償化に意欲的な発言を行ったのだ。

さらに、その一挙手一投足がメディアに取り上げられる、自民党の小泉進次郎議員らが「子ども保険」構想をブチ上げ、議論に本格参戦した。もともと教育無償化を改憲案の柱に掲げてきた日本維新の会や民進党などの野党も巻き込んで、"教育無償化アピール合戦"の様相を呈している。

今回の議論の特徴は、各政党とも「無償化」という点では意見が一致していることだ。日本の格差拡大、教育に対する公財政支出が少ない、教育費負担が重い、といった現状認識は各党一致しているからだ。日本の教育無償化はこれまで、義務教育の小・中学校以外では、主に幼児教育や高等学校で段階的に進められてきた。いずれも所得制限をかけた上で、保育料や授業料を無償化してきたが、大学については授業料減免と奨学金の充実にとどまっていた。

議論が分かれる4つの財源

無償化の対象についての主な論点は、1)幼児教育や高校の無償化について所得制限をなくすか、2)大学にも幼児教育や高校のように、所得制限付きの授業料無償化の仕組みを導入するか、だ。各党の主張を見ると、幼児教育の無償化の範囲拡大についてはほぼコンセンサスがあるが、大学の無償化については意見が分かれる。

しかし意見が大きく分かれ、かつ、より重要な議論は、必要な財源をどうやって賄うか、である。無償化の範囲次第で規模は数千億円から5兆円までさまざまだが、財源の種類は大きく4つのタイプに分かれる。

1つ目は使途を教育費に限定した「教育国債」を発行するものだ。自民党や民進党などが主張しており、自民党の下村博文・元文部科学相は「建設国債よりも乗数効果は高い。先行投資することに意味がある」とし、「建設国債の教育版」と位置づけている。

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