7000通りの仕様がつくれる国産腕時計の秘密 月産1万台でも追いつかない「Knot」の正体

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――「働く」ことの喜びを存分に活かし、仕事も順調に。

遠藤氏:一方で、どんなによい商品でも、顧客層に合わないものは売ることができないことに、バイヤーとしての消化不良のような気持ちも抱えてもいましたね。社会現象を引き起こしたあるおもちゃも、実はブームになる前に目をつけていたのですが、おもちゃであり顧客層に合わないと、通販ラインナップから外れてしまった商品のひとつでした。

「自分の目利きが活かせず、ただ指をくわえてブームを見過ごすだけ」。バイヤーとしてこれほど悔しいことはありません。そういったことが一度だけでなく、何度も続きました。もっと扱う商品の範囲を広げて、影響力のある製品を取り扱いたい……。そうした想いが募っていたころに、先輩の誘いに乗って、どんな商品でも扱える企画会社の起業に加わることになったんです。

実は、それまでいた通販会社は、社長が叔父であったため、退職には親戚も含め、まわりは猛反対。社内でのキャリアも順調に、チーフバイヤーを任されるまでになっていましたが、私の中ではもう「安定した未来」よりも、仕事でとことん極めてみたいという気持ちの方が強くなっていたんです。

若さを武器に、飛び込んで築いた人脈

遠藤氏:新しく立ち上げた商品企画会社では、若さを武器に、いろいろなことにチャレンジさせてもらいました。当時は、インターネットもそれほど普及しておらず、まだまだ海外製品は珍しいもので、ZIPPOなどの海外製ライターは、特によく売れていました。別注モデルなども自分たちで企画し、商品にする。自分が気に入ったものがお客さまから支持されることに、喜びもひとしおでしたね。

また当時、人気テレビ番組の外部バイヤーを縁あって務めていたのですが、その仕事で世界中をまわって面白い商品を探すこともやっていました。番組の企画会議で決まった特集に沿って、あらゆるところに出かけます。たとえば、「マイケル・ジョーダンが引退するからその企画で」と決まれば、「マイケル・ジョーダン特集」と銘打った“指令”がきて、実際にマイケルの家族に会いに行き、レアものをゲットしてくる、といった具合です。

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