新日鉄住金、機密漏洩の元社員が解決金払う 韓国ポスコに「技術流出」、約10人の責任追及

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眼下に広がる北九州市戸畑区の新日鉄(現在は新日鉄住金)の工場群=2011年11月15日(本社ヘリから、撮影・岩崎拓郎)※写真と本文は直接関係ありません

新日鉄住金は今月17日、韓国の鉄鋼大手ポスコに特殊な鋼板の製造技術を提供したとして、不正競争防止法に基づき、元社員の70代の男性=福岡県=に損害賠償を求めていた訴訟の和解が成立したことを明らかにした。

この男性を含め、技術漏えいに関わった元社員約10人が新日鉄住金に解決金を支払ったという。知的財産権の専門家によると、企業が独自技術を持ち出した個人の責任を訴訟で追及する事例は珍しいという。

韓国ポスコに加えて元社員も訴えていた

当記事はqBiz 西日本新聞経済電子版の提供記事です

新日鉄住金は2012年、八幡製鉄所で製造されていた電磁鋼板の技術を、男性が退職後の90年代にポスコに漏らしたなどとして、ポスコと男性を提訴。ポスコとは15年、約986億円の賠償請求に対して300億円の和解金を支払うことで和解が成立。継続していた男性との訴訟は昨年末、和解が成立、今年3月末に訴えを取り下げた。和解金額は明らかにしていない。

経済産業省が製造業など約2千社を対象にした企業秘密漏えいに関する調査では、漏えい元は約25%が「中途退職者」、約8%が「現職」だった。同法違反(営業秘密開示)での摘発も、13年の5件から昨年は18件に増えているが、日本企業の多くは企業イメージ低下の懸念などから訴訟での「産業スパイ」の責任追及をためらいがちという。

知的財産訴訟を手掛ける明倫国際法律事務所(福岡市)代表弁護士の田中雅敏氏は「企業情報を持ち出した個人を許さないという姿勢は、産業界全体での再発防止効果になる」と話している。

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