テレビが勘違いしている視聴者ニーズの現実 視聴率至上主義、似た番組ばかりで「誰得?」

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「過去の成功と手堅い策の間でさまよっている」というのがフジテレビの現状であり、それは残念ながら視聴者ニーズと一致していません。現在のキャッチフレーズ「フジテレbe with you.」を実践するのなら、目先の視聴率ではなく、視聴者のニーズに応え、愛着を持てるような番組作りを進めるべきでしょう。

求められる「ダブルスタンダード」

ちなみに、テレビ東京はニッチな番組が多く、「コアな視聴者ニーズのみに応える」というビジネススタイルであり、他局と同系列でとらえないのが基本。ときどきマスな視聴者ニーズに応えることもありますが、それはあくまでコアなニーズに応えようとした結果であり、だからこそ、同局の番組は力を抜いて見られるのです。

ここまで各局が視聴者ニーズから離れている理由として、日本テレビは「バラエティ偏重と他局たたき」、テレビ朝日が「極端な中高年シフトと抱き合わせ特番」、TBSが「バラエティのさじ加減を間違える」、フジテレビが「過去の成功と手堅い策の間でさまよう」を挙げていきました。

もう何年も前から、人々の「テレビ離れ」が指摘されていますが、本当にそうなのでしょうか? 絶好調が続く「世界の果てまでイッテQ」(日本テレビ系)、昨年末の「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)、WBC中継などのスポーツを見れば、人々は「ニーズを無視したテレビ番組から離れているだけ」であって、「テレビそのものから離れているわけではない」という真実が浮かび上がってきます。

低迷が叫ばれる今だからこそ、各局に取り戻してほしいのは、「視聴率=視聴者ニーズではない」という前提。「視聴率が取れれば視聴者ニーズを満たしている」というわけではなく、「視聴率も取れて、なおかつ視聴者ニーズを満たせるのはどんな番組なのか」というダブルスタンダードでの番組作りが求められているのです。

テレビが「好きなときに、好きな場所で、スタートから見られる」というユーザビリティの面で、ネットに勝てないのは明白。だからこそ、視聴者ニーズに応えるのはもちろん、コンテンツの質で上回っていくための努力が必要ではないでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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