北朝鮮危機は金正恩の「怯え」が原因だった

米国のメッセージで彼が感じる「命の危険」

冷静なマティス国防長官とマクマスター安全保障担当大統領補佐官は、軍事力を行使する場合にも最も政治的効果があり、アメリカ側の損害が少ないシリア・アサド政権への攻撃に絞り込んだと見られる。

マティス国防長官は、核ミサイル拡散の危機において、イランと北朝鮮をワン・パッケージで見ている。イランが最大の脅威であり、オバマ政権のイランとの核合意に反対した。その結果、2013年にアメリカ中央軍司令官を解任されたという経歴を持つ。今回、彼は北朝鮮を叩くこと、あるいは締め付けることで、イランを締め付けることが出来るという考えを持っているとみられる。

化学兵器を使用したと思われるシリアへの攻撃は、金正男氏暗殺にVXを使った北朝鮮→テロ支援国家再指定への動き→北朝鮮へのトマホーク巡航ミサイルを使ったサージカル・ストライク(重要目標に対する精密誘導兵器によるピンポイント攻撃)という流れが、一気に現実味を帯びてきたことを北朝鮮に突きつけている。

今度はアメリカがシリア攻撃でメッセージを送った

つまり、北朝鮮は、「攻撃したら核ミサイルを使ってでもやり返すぞ」というメッセージを発したが、その1カ月後、アメリカは「大量破壊兵器使用に対して実際に攻撃したぞ」というメッセージを返したのである。

韓国の軍部はというと、さらに積極的になっている気配がある。その一つが、特殊部隊による「斬首作戦」という言葉を使いだしたことだ。つまり相手のトップを直接狙うというのである。アメリカの特殊部隊は、生還が作戦の基本で、北朝鮮のような、特殊部隊を多く持ち、通信傍受能力の高い敵地への潜入作戦では、通信もできず負傷者の救出も困難であることから、アメリカ軍は特殊部隊を投入して一回で決着をつけるのは難しいとみているようだ。むしろ反政府ゲリラを作れという考えを提案している。

ところが、韓国の特殊部隊は、「生還を期さず」という考えであることから、ともかく「やってしまえ」という声がつよい。今回は、アメリカよりも韓国の方が積極的なのである。そのための旅団を従来の計画から2年繰り上げて、年内には設置することになった。さらにこの韓国軍の斬首作戦をバックアップする陸軍と海軍の特殊部隊をアメリカは韓国内に入れてきている。しかも、その部隊の写真をメディアに公開してもいる。

金正恩にとっては自分の命の問題であるから、われわれが思うよりはるかに危険を感じていると思われる。もちろん、強硬手段のみが解決法ではない。圧力を加えつつ、ソフトランディングの道を探るのが正道である。が、今回は別な要素も金正恩にとって逆風に見えていると思われる。

それはアメリカの政治状況である。トランプ新大統領は、共和党主流派からこれまでのロシアとの関係を問題視されており、相当なプレッシャーを受けている。与党の共和党にしてみたら、トランプが万が一弾劾されても、主流派との関係がよいペンス副大統領が昇格するだけのことである。その中で外交・安全保障で現政権が政治的に窮地に陥った場合、トランプ大統領が何らかの強硬策をとって窮地から脱しようとする可能性は十分ある。

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