北朝鮮危機は金正恩の「怯え」が原因だった

米国のメッセージで彼が感じる「命の危険」

さらに「労働新聞」の記事をみると、そこには「有事の際に在日米軍基地の攻撃任務を担う北朝鮮の部隊が発射訓練をし、成功した」とあり、さらに「ただ一点の火花でも散らすなら、核弾頭を装填した火星砲で侵略と挑発の本拠地を焦土化する決死の覚悟を固くした」と述べている。

要するに、米韓両軍が手を出せば、こちらも撃つぞ、ということである。手を出さない限り海に向かって撃つだけであり、もっと言えば、手を出さないでほしい、ということをアピールしているのである。つまり、手を出される危険性を感じている証左でもある。このことから、これまでの実験や政治ショーとしてのミサイル発射とは、一線を画すものであるといえる。

また、韓国ではなく在日米軍基地への攻撃能力をあからさまに示したことも、注目する必要がある。自らへの攻撃の代償となり、抑止効果を期待できる目標と考えていることを意味する。この点、アメリカの安全保障にとっての日本の重要性に対する金正恩の認識は、正確なものだ。つまり、アメリカにとって日本は、カリフォルニアと同じ位置づけにある本土防衛の第一線であるということだ。

もちろん金正恩は自分の方から撃つという姿勢は示していない。日本人の方がよく理解できていないかもしれないが、日本に対する攻撃は、アメリカ本土防衛線への攻撃とみなされ、即時に核による反撃が予想されるからだ。金正恩はそのことをはっきり理解している。

金正恩が抱く危機感の背景

金正恩が在日米軍基地への攻撃をにおわすことまで行った背景には、相当の危機感を抱いている様子がうかがえる。

確かに1994年の核危機以来、初めて米韓が軍事攻撃しようとする兆候が顕著だからだ。94年の危機の際にも、アメリカは、海上封鎖の態勢をとった。いうまでもなく海上封鎖は戦争への分水嶺だ。むろん重要拠点に対するピンポイントの攻撃(サージカル・ストライク)の態勢もとった。

しかし、金泳三・韓国大統領(当時)が、北朝鮮が体制崩壊した場合の影響に韓国社会が耐えられないという理由で、アメリカに思いとどまるよう要請し、武力行使は控えられた。しかし、ぎりぎりまで軍事的圧力をかけた結果、効き目はあった。金日成・カーター会談が行われ、南北首脳会談が実現したからだ。韓国が北朝鮮に対する強硬措置への歯止めとなったわけだが、北朝鮮はその後、ミサイル開発、核実験を再開し、また周辺に対する挑発行動を続けた。それもあって、今回は韓国国内で武力行使を容認する声が出てきている。

その中で、アメリカの新政権が発足した。アメリカ国内でも3月頃から、トランプ政権が軍事攻撃を選択するのではないかとの予測が出ていた。このときは北朝鮮への軍事攻撃として語られていた。これは共和党主流派の「トランプ切り」の予感の中で生まれたものだった。つまりロシアとの関係を理由に弾劾に持ち込まれた場合、トランプを切り捨てて、共和党主流派のペンス副大統領の政権にすることで、トランプとともに共和党が壊滅状態になることを避けようとする空気が生まれていた。そしてこの逆境をトランプが乗り切るためには、戦争しかないという見方だった。

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