入社直後から出向9年、元の社に戻る権利は?

採用時にどう説明を受けていたかが重要

「ご相談の場合は、採用時や配属決定の際に出向についての合意をしていないとのことですから、具体的事情にもよりますが、そもそも出向を命じられないケースとも言えそうです。また、本件では、出向の期間についての明示がないとのことですから、このことも出向命令の有効性に影響しそうです。

労働契約法14条においても、『使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする』と明文化されています。

この点については、出向命令をする使用者側の業務上の必要性と、出向者の労働条件や生活上の不利益とを比較して検討し、例えば、出向先の労働条件・出向期間・復帰の条件などについて、労働者に著しい不利益を被らせない内容で具体的に規定が整備され、その規定を前提とした労働者の同意が必要と考えるべきです。

こうした立場によると、本件の場合は、出向期間についての明示がないので、労働者にとってはいつになったら元の会社に戻れるか分かりませんから、労働者にとっての不利益は著しく、労働契約法14条により出向命令が無効となる可能性があります(実際には、他の事情も加味されて有効性が判断されます)」

出向元の会社に戻れる?

無効となった場合には、期間にかかわらず出向元の会社に戻れるのだろうか。

「出向命令が無効となれば、出向元の会社との雇用契約が維持されたまま、労務提供の相手方が出向先の会社から出向元の会社に戻ることになります。

出向は、転勤と違って、本来の雇用契約の相手方である使用者とは異なる使用者が労務提供の相手方になる点で、労働者に与える影響が大きいものです。労働者としては、条件が曖昧なままで出向に応じてしまうと、思わぬ不利益を被るおそれもありますから、出向の条件を明示してもらった上で同意をするようにしたいものです」

柴田 幸正(しばた・ゆきまさ)弁護士
2008年登録、愛知県弁護士会所属。同弁護士会の労働法制委員会では研修部会長を務め、2016年10月からは家事調停官(非常勤裁判官)も兼務。地元の瀬戸市で、個人向けの一般民事・家事事件、中小企業向けの顧問業務などを取り扱っている。
事務所名:柴田幸正法律事務所

 

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