プロから見て国内線「無料手荷物枠」は不要だ 欧州では「荷物代は別料金」が主流

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欧州の航空会社は、運賃形態を変えた結果、利用客に対するサービスの仕組みも変える必要が出て来ている。その結果、こんなことも起こる。

「機内でまさかスーパーで売っているサンドイッチを買わされるとは! 航空会社はどこまでコストダウンを図るつもりなんだ? メジャー会社のサービスも格安航空と同じじゃないか」。ロンドンで人材紹介の会社を営むポールさんはこういぶかる。

BAが短距離線エコノミークラスで販売する、マークス&スペンサーの食品(Photo by Nick Morrish/Courtesy of British Airways)

出張に頻繁に出るポールさんはこのほどBAでフランクフルトに行った時、「いやー、ショックだったよ。経営がどこも苦しいのはわかっているけど、仮にもフラッグキャリア(国を代表する航空会社)がこんな細かい商売をするとは……」。

無料だと思って手に取ったサンドイッチが有料、しかも大手スーパー・マークス&スペンサー(M&S)の商品だったことに驚きを感じたという。

BAは今年1月から国内線や欧州線で食事や飲み物の有料化に踏み切っている。しかし、今のところ有料化については足並みがそろっていない。前述のポールさんがあきれたBAのようなケースはまだ少数派で、たとえばエールフランスやルフトハンザ、KLMオランダ航空などは欧州内路線でも引き続き無料で飲食物を提供している(2017年4月現在)。ただ、徐々に有料化の流れが広まっており、たとえばJAL(日本航空)やBAとコードシェア(共同運航)を行っているフィンランド航空は、欧州内路線で飲食物の有料販売(一部の飲料を除く)を行っている。

「機内の一部がLCC」という例も

「あらゆる層の顧客に対応する」として、ひとつの機内でビジネスクラスからLCC的な席までつくってしまった航空会社もある。

ルフトハンザ傘下のユーロウイングス(ジャーマンウイングス運航の路線も)は、ルフトハンザなどの長距離便からの乗り継ぎ客や一定の金額以上を支払った利用客には食事も飲料も無料で出す一方、最安価格で乗る利用客には「申し訳ありません。皆さんには何もサービスがありません」と乗務員がキッパリ断っている。

この取り組みでは、機内のレイアウトを変えたりすることなく、乗務員が予約台帳や席割りなどを見ながら、サービス内容を調整するだけなので、経費的にも最小限に抑えられるわけだ。

KLMは自社傘下にLCC・トランサヴィアを抱える(アムステルダム・スキポール空港にて、筆者撮影)

「子会社としてLCCそのものを運営する」という例もある。ルフトハンザによるユーロウイングスのほか、エールフランスが「HOP!(フランス語風にオップ、と読む)」、KLMが「トランサヴィア」、イベリア航空(スペイン)が「イベリアエクスプレス」をそれぞれ運営しており、自社でカバーし切れないローカル路線に飛ばしたり、幹線ルートをよりコストの安い小型機で運航したりといった方針を打ち出している。

東京五輪に向け、外国人訪日客もさらに増えていくことだろう。欧州のビジネスモデルを参考に、日本の航空会社でもより廉価で航空旅行が提案できる方法を考えてほしいものだ。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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